ワシ

レクイエム・フォー・ドリームのワシのレビュー・感想・評価

3.5
むかしから気になってたけど、なんだか手が出なかった作品。
だってこの作品、鬱映画として有名だもんね。
そして今回ようやく初視聴。

おやおや?
予想に反して、ポンポンとテンポ良く話が進むじゃないか。
おクスリのシーンなんて、小気味良いったらありゃしない。
ラリった高揚感も相まって、主要キャストの4人は輝ける未来を夢想する。
しかしジャンキーのお気楽妄想が上手く行くはずもなく、おクスリへの依存度は増し、人生ぶっ壊れてしまいます。
エレン・バースティンの悲哀と狂気の演技は圧巻でした。

どん底から這い上がって栄光を掴む人が輝いて見えるのと同様に、奈落の底へ堕ちていく人も独特の魅力がありますねぇ。
肯定するワケではないけど、破滅の美みたいなものが感じられ、妙に惹きつけられてしまう。
あんな事が自分の身に降り掛かって欲しくはないけどね。
他人事だし映画の中の話だから、こんなノンキなこと言ってられるんだけど。
でもまぁ…あんな苦しみを味わってる人は、実際に大勢居るって現実も忘れちゃいけないな。

しかし、なんでこんなに軽快でテンポいいんだろね?
思ったんだけど、コレっておクスリ摂取の疑似体験だったりするんじゃないの?
様々な技術や編集で作られた軽快なテンポは、観てて「気持ちいい」んだわ。
その一方で、登場人物たちの生活や思考は、徐々に荒んでいくんだよね。
しかし映像や語り口は、あくまで軽快で「気持ち良く」観続けられてしまう。
気づいたら、激鬱ストーリーにどっぷり浸かってるってワケだ。
こうした流れは、意図的におクスリ中毒の過程に似せていたのでは?
コレって深読み過ぎかな?

なんとも救いの無い作品だったけど、不思議と鬱な気分にはならなかった。
ま、たまたまだろうけど。
ラストシーンは「そんな彼ら彼女らにも、安らかな眠りを…」と、お慈悲のようなものを願わずにいられない作品でした。
ワシ

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