三樹夫

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカの三樹夫のレビュー・感想・評価

4.0
私が観たのは本編229分のバージョン。禁酒法時代のギャングの少年期から老年までの4時間近い超大作の一大抒情詩。ただしギャング要素は結構少なくて、『スタンド・バイ・ミー』の一番幸せだった少年時代とその後を描いたというような切ないノスタルジーでもあるし、何よりもこの映画の一番強い要素は友情ものというかブロマンスというか、ヌードルスとマックスのホモソーシャルというよりもはやホモセクシャルにまで突入している関係だ。マックスはヌードルスのことめっちゃ好きやん。ヌードルスとデボラの初キスに水を差すシーンで、お前が女の家に入るのを見たので後をつけたと言っており、ストーカーかよきっしょとのっけからホモソーシャル的雰囲気は充満している。玉座の椅子のシーンでの女は出ていけというのでホモソーシャルは確固なものとなる。デボラとイチャイチャしてたくせに、お前だってキャロル連れ込んでるやんけと、何やってんだこいつら状態。ヌードルスとマックスの、特にマックスの2人だけの世界の中に誰も入れたくないというホモソーシャル世界だ。最終的にお前に殺されたい、好きゆえに苦しみを与えたい、お前の好きな女を俺は好きでもないがお前のことが好きだから囲むという異常行為が、ある種セックスの代わりのような行為となっている。最後のゴミ収集車と最初の馬車は重ね合わせられ、一番幸せだった少年時代へとリンクし邂逅する。ヌードルスとマックスの一番幸せだった瞬間は、海に沈められたブツを取りに行って2人で海に落ちてからの一連のシーンだろう。

マカロニウエスタンを撮ってきたレオーネだが、その時の手法はそのまま使われており、この映画はギャング版の西部劇ともなっている。レオーネ演出の特徴の長い間と極端なクロースアップで緊張感を出す演出はこの映画でも見られる。エレベーターが下がってくるのをずっと撮りギャングのクロースアップをインサートし緊張感を高めてズドンがそうだ。レオーネが西部劇の決闘シーンで用いる演出が使われている。エレベーターが下がってくるときの操作音もフィーチャーされており、音によっても緊張感が高められている。玉座の椅子のシーンで、ヌードルスが延々スプーンでコーヒーをかき回す音が響く中、そこにいる人物のアップが挿入されていくのは『続・夕陽のガンマン』の最後の三すくみの決闘シーンと同じだ。延々スプーンでコーヒーをかき回す音が響くというので緊張感が高まる演出となっている。
他にもデトロイトから来た宝石盗んでくれというおっさんが初顔合わせの際に登場時から主人公たちに目もくれずずっと飯を食べており、嫌なおっさんというのが演出されている。

主人公周りの面々は、労働争議のストライキをする側につくことでわりかし義賊的な感じなのかなと思わせるが、赤ちゃんをどのように取り換えたのか書いた紙無くしちゃったわテヘペロというように終わらせており、こいつらはゴミクズという目線で描かれている。そもそも主人公がレイプ野郎だし。運転手の反応からもこいつはゴミクズ野郎という目線であることが分かる。
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