TaiRa

巨人と玩具のTaiRaのレビュー・感想・評価

巨人と玩具(1958年製作の映画)
5.0
戦後日本の空虚さを風刺したハイスピード・ブラックコメディ。

製菓会社の特売商戦を巡る風刺劇。宣伝部の若手社員である川口浩と上司である「宣伝の鬼」高松英郎の関係は『L.A.大捜査線』などの形式に近い。ガンギマリした先輩からの継承モノ、になるかならないか。『群衆の中の一つの顔』や『ネットワーク』みたいな偶像を作り上げる話でもあり、大衆蔑視ブラックコメディでもある。彼らが売るのがキャラメルというのも無意味さに拍車をかける。街頭で物乞いをする傷痍軍人を誰も気に掛けず、商売にだけ関心を持つ空虚な日本人たち。社会の歯車になって命を擦り減らせる男たちと達観した女の対比。偶像=アイドルとしてムクムクと変化する野添ひとみのハマりっぷり。まくし立てる様な台詞回しの迫力、スピード、展開の速さが常軌を逸している。高松英郎が火のつかないライターをカチカチやると、それがキャラメル工場の風景や写真撮影の風景に音を重ねながらオーバーラップする場面が異常で良い。ワールド製菓会社の地球型のネオンは『暗黒外の顔役』?ハワード・ホークスへのオマージュっぽい。スピード負けてない。野添ひとみがステージで披露する歌が「土人の女に売り付けろ〜」みたいなこと歌ってて凄過ぎ。皮肉たっぷりの結末も最高。
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