K

華氏451のKのレビュー・感想・評価

華氏451(1966年製作の映画)
4.8
これでもかというくらいの哀しみに覆われた。

本が禁止になった社会。思想管理体制が敷かれ、本は燃やされ、所有者は逮捕される。本の中身は空っぽで、何も教えてくれない。小説は実在しない人物の物語で、読んだ者を不幸にする。哲学書はより有害だ。「自分は正しく、他の者はバカだ」と言うだけ、と。

ここで描かれている社会と、私たちが生きている現代社会に多くの違いを見つけることが出来なかった。本が燃やされないことと逮捕されないこと以外に。

現代社会も、禁止されていないのに、本を読んでいない人の方が多い。それは時間がないわけでも、お金がないわけでも、集中力がないわけでもなく、「本」を信じていないのだと思う。小説も、哲学も。

大きな物語はざっくりと信じているけれど、小さな物語はきっちりと拒絶している。それを感じて、ひどく悲しくなった。

私は、本と一緒に燃やされる道を選ぶ。あるいは、物語を頭に入れて、森に行きたい。名前は「キャッチャー・イン・ザ・ライ」で。
K

K