ミサホ

華氏451のミサホのレビュー・感想・評価

華氏451(1966年製作の映画)
4.0
手持ちのDVDの中から、本作を選んで観てみました。1960年代の作品。


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SF作品とジャンル分けされているが、設定が興味深い。本が禁止されている世界。本の所持で摘発され、押収された書物は火炎放射器で焼き払われる。

華氏451
本に火がついて燃え出す温度

その摘発、押収、焼却を担うのは消防士だ。そう、火を消すのが仕事の消防士が、本作では、消火ホース🧯の代わりに火炎放射器で本を燃やし、灰に変えるのだ。

なんとおぞましい世界…

昼下がりの公園でいきなり検問のようなものが行われ、バッグの中を荒らされ、ポケットをチェックされる。赤ちゃんの上着の小さなポケットに入った“豆本”まで!

神保町が怒るよ。

消防士のひとり、モンターグはその冷徹な仕事っぷりで昇進間近だ。ところが、ある女性と出会い、本に興味を持つように。

初めて本を読んだらしいモンターグは、出版社から発行者まで全部いちいち読む。そんな少しコミカルなシーンもところどころあった。

果たして、本に魅せられたモンターグは、以前と変わらず職務を全う出来るのか…
そんな物語である。

作品のモダンな色使いがとても良かった。
洒落ている。全体的にはグレーやブラウントーンなのだけど、ハッとするほど鮮やかな赤と黄色寄りのブルーが美しく、インテリアや女性のファッションには魅せられた。

その鮮やかさは、どこか『時計じかけのオレンジ』を思わせる。また、消防士の、ショッカーのような黒い衣装と消防車🚒や消防署の鮮烈な赤で、スタンダールを思い浮かべたけど、終盤、その名が出てきて納得。

政府が“反社会分子”としている本好きの人々は、摘発を逃れて森の中でひっそりと暮らしている。その人々は互いに本名を明かせないらしく、それぞれ本の題名を名乗っている。

ある双子の兄弟は、兄が“高慢”で、弟が“偏見”といった具合に。サルトルの本のタイトルを名乗る人もいれば、ディケンズのタイトルを名乗る人も。

本を読み、覚えたら焼く。
物語や知識は頭に入れる。
そうすれば焼かれることはない。

理不尽に立ち向かう人々が美しい。
ミサホ

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