がちゃん

華氏451のがちゃんのレビュー・感想・評価

華氏451(1966年製作の映画)
4.0
フランソワ・トリュフォー監督による、
異色社会派SF作品です。
SF嫌いを公言するトリュフォーが取り上げるのが、
珍しくて興味深いですね。

完全な思想統制のとられた、
某国の未来社会。

この世界では、本は架空の世界の作り話で、
夢中になると国家の思想体系を崩してしまうということで、
読むことどころか、所持することまで完全に禁止されていた。

火を消すのが仕事の消防士も、
この世界では、
皮肉にも本を燃やすのを仕事にしていた。

この消防署で昇進を目前にした主人公は、
モノレールの通勤途中知り合った女性の影響で、
本に興味を持ち始める。

家では、
テレビに完全に支配された妻との、
なんとなく白けた生活。

数々の本の焼却に、
活字の虜になりかけてた主人公は、
自分の仕事に疑問を持ちつつあったところ、
妻の裏切りにより、
主人公は自宅を焼却しなければならなくなり・・・

思想統制された恐怖政治。
近所の人々は密告合戦、
デフォルメされているとはいえ、
恐ろしさが忍び寄ります。

現代では火を消すのが仕事の消防士が、
火をつける仕事に変わっているのも皮肉。
図書館なみに本を所蔵していた老婆が、
本の中で油をかぶり、自ら火をつけるシーンが痛ましい。

本の人々が住むという村に、
主人公が逃亡しようとするシーンはサスペンス。
警察隊は、空からも主人公を追う。

雪の中、
老人が子供に、
暗記していた本を読み聞かせるシーンが美しい。

テレビ社会に対しての、
皮肉もチクリ。
がちゃん

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