フランソワ・トリュフォー監督による、
異色社会派SF作品です。
SF嫌いを公言するトリュフォーが取り上げるのが、
珍しくて興味深いですね。
完全な思想統制のとられた、
某国の未来社会。
この世界では、本は架空の世界の作り話で、
夢中になると国家の思想体系を崩してしまうということで、
読むことどころか、所持することまで完全に禁止されていた。
火を消すのが仕事の消防士も、
この世界では、
皮肉にも本を燃やすのを仕事にしていた。
この消防署で昇進を目前にした主人公は、
モノレールの通勤途中知り合った女性の影響で、
本に興味を持ち始める。
家では、
テレビに完全に支配された妻との、
なんとなく白けた生活。
数々の本の焼却に、
活字の虜になりかけてた主人公は、
自分の仕事に疑問を持ちつつあったところ、
妻の裏切りにより、
主人公は自宅を焼却しなければならなくなり・・・
思想統制された恐怖政治。
近所の人々は密告合戦、
デフォルメされているとはいえ、
恐ろしさが忍び寄ります。
現代では火を消すのが仕事の消防士が、
火をつける仕事に変わっているのも皮肉。
図書館なみに本を所蔵していた老婆が、
本の中で油をかぶり、自ら火をつけるシーンが痛ましい。
本の人々が住むという村に、
主人公が逃亡しようとするシーンはサスペンス。
警察隊は、空からも主人公を追う。
雪の中、
老人が子供に、
暗記していた本を読み聞かせるシーンが美しい。
テレビ社会に対しての、
皮肉もチクリ。