本、就中古典や名作と呼ばれる本は、ある人間がその人生を通じて体験した悲喜交々や時代の空気がぎゅっと詰まったものだ。
だから、それを読むことで強靭な知性としなやかな感性を育むことができ、自分の人生を豊かにできるのだ。
本作の舞台のような、本が禁止された世の中でも、本が人の心を惹きつけることには変わりなく、その文化は必ず草の根的に引き継がれていくのだ。
古今東西、焚書や言論弾圧が行われた例は数多いが、古典が失われずに継承されていることが、その何よりの証左だろう。
より危惧すべきは、本作のように上から禁止されることではなく、民衆自身が読解力や想像力を失っていき、本の良さを理解できる人間が減っていくことかと思う。
目まぐるしく変わる社会の中で、いかに普遍的な読解力や想像力(古典を理解できるような)を育んでいくかが、大きな課題だと感じた。