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おかあさんのleylaのレビュー・感想・評価

おかあさん(1952年製作の映画)
4.1
タイトルのイメージどおり、心が洗われる作品だった。全国児童綴方集から選ばれた作品を水木洋子が脚本。当時は子供たちも観たのかもしれない。

戦後間もない日本の庶民の日常をそのままドラマにしたような素朴な作品。子供は子供らしく、母は母らしく、ご近所とも助け合う、昭和の日本の家族の原風景がありました。

戦争は終わっても当時の日本では人の死が間近にあり、家の中で家族が普通に病死していく時代。

娘(香川京子)はお母さん(田中絹代)が大好き。そんなナレーションから始まる。兄が病死し、父もクリーニング店を再建して間もなく過労で亡くなる。それでも残された者は落ち込んでいる暇もなく、明るく生きていくしかない。貧しくても、辛いことがあっても、母は強く優しく家族のために、子供たちも家族を想いながら力を合わせて生きて行く。

登場人物の誰もが優しくて身に沁みる。こんなに普通の話なのに最後まで飽きさせない成瀬監督の手腕。田中絹代と香川京子の純粋さにとても癒やされました。悲しいことを淡々と描いているところが返って余韻となってじわじわと残ります。
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