おかあさんの作品情報・感想・評価

「おかあさん」に投稿された感想・評価

「おかあさん、あたしの大好きなおかあさん、幸せですか? 私はそれが心配です。」(本作ラストの香川京子のナレーションより抜粋)

最近物議になった「あたしおかあさんだから」という歌。個人的には歌詞の内容を全否定するまではいかないけど、ちょっとお母さんの理想像をごり押ししてるような気がする。

少しでもこの映画のような視点が歌に入っていれば、誰もが納得するような歌になったのでは?……あくまで個人的な見解ですが。

成瀬巳喜男監督の児童映画「おかあさん」は、香川京子扮する十七、八の年頃の娘(島田髷なんか本当に綺麗!!)の目線で描かれる。

クリーニング屋を営む両親(父は三島雅夫、母は田中絹代)と仲むつまじく暮らしていたが、跡取りだった兄が肺の病で呆気なく死に、父も長年の疲れがたたり、病床に臥せってしまう。

父親の弟分でハバロフスク帰りの通称“捕虜のおじさん”(加東大介)が仕事を手伝ってくれるものの、田中扮する母は女手ひとつで、香川や末っ子の娘、そして親戚から預かっている坊やを養うことになる。

本作品の田中絹代は常に明るい笑顔を絶やさないようつとめるが、しかし、どこかその表情には疲れが出ている。

あんなに気丈に振る舞っているけど、本当にうちのお母さんは無理していないだろうか?

本当に幸せなんだろうか?

……と子供が親のことを気遣う前述のナレーションで本作は幕を閉じる。

成瀬監督、淡々としたタッチで等身大のある一家の情景を描いている。

オーバーな演出ではないからこそ、見終わった後、まるでボディブローのように徐々に体に効いてくるような映画だった。

だけど、所々、クスっと笑わせるような、くすぐりもあり、決して陰鬱な気持ちにもさせないのが良いなぁ。

「ヒロシマ・モナムール」や「砂の女」に出演したあの岡田英次が本作では意外にもコメディリリーフになってるのが面白い。

香川に恋するパン屋の倅を演じているが、彼の作る“ピカソパン”がとにかく強烈すぎる。

なお劇中、どっか見覚えのある風景が映し出されるが、あとで調べてみたらやっぱり地元の石神井公園でした!

地元民として、ちょっとうれしい。

■映画DATA==========================
監督:成瀬巳喜男
脚本:水木洋子
製作:永島一郎
音楽:斎藤一郎
撮影:鈴木博
公開:1952年6月12日
そう言えば今年度の邦画の授業で最後に取り扱われて観た作品だ。先生の成瀬推しには若干疲れたが、それでもこの作品はなんだかすごい。幸せそうでそうじゃないところもちゃんと描けてる。すごい。わたしは小津の映画の方が好きだが、今回は成瀬にももちろん脱帽
Taul

Taulの感想・評価

5.0
戦後の家族の苦労と明るさ。

省略の美学。例えば成瀬の「おかあさん」では家族の不幸の場面は省略され、淡々と家事をこなす母親の後ろ姿に戻る。小津の「秋刀魚の味」では娘の結婚式自体のシーンはとばされ、独りになった父親が台所に佇む。これはせつない。日本人だけでなく世界中の人が分かる感覚のように思う。
成瀬巳喜男監督が描いた水木洋子原作を映画にしたホームドラマ。

登場人物は善人ばかりで映画にはホノボノとした雰囲気が常に漂っているのだが、物語の内容に目を向けて見ると「息子との死別」・「父(…夫)との死別」・「娘の口減らし」・「親しい人との別れ」など結構シビアなエピソードが続くが、その中でも香川京子の花嫁衣裳はキュートである。(なぜ花嫁姿だったかは、敢えて書きません。)


しかし、この映画、時世の流れがテンポよく、例えば(香川京子の働いている)「今川焼」が一瞬で「アイスキャンデー」になって冬から夏になったり、人が死にそうになっていると(死ぬ場面は省略して)いきなり「お悔みの挨拶」になったり、などなど。

暗いエピソードが多い物語を、ここまで温かく描ける成瀬監督、大したものである。
素晴らしい傑作。
rollpain

rollpainの感想・評価

4.8
思わぬところでShing02のサンプリングネタに遭遇してしまった。
かめの

かめのの感想・評価

4.6

香川京子特集にて。

素晴らしい!香川京子演じる娘の心情が読み上げられるのが良い。

一人一人の複雑な気持ちが仕草や表情に上手く現れていて、これは胸が痛い。

最後辺りで、嫁入りかと勘違いをするお茶目な話が好き。それに対して、ガハガハ笑う加東大介。似合うね。

田中絹代演じる母親はずっと疲れた顔をしていて、本人は笑ってるつもりでも笑えないほどに疲れているのがわかる。

お母さんが幸せか、心配なの。

終 ふふ。
mince

minceの感想・評価

4.0
おかーちゃーん!!成瀬巳喜男監督「おかあさん」塚口サンサン劇場で観た。おかーさぁーん!(☍﹏⁰)。 観てよかったyo。2013年8月1日
決して楽しい話でもないのに、本作のように悪人どころか悪意さえも全く出てこない映画もなかなかない。そういう徹底したところが好き。

肺病(?)の息子が病院から脱走したことを聞いて家を飛び出そうとする母・田中絹代に、父・三島雅夫が「どこ行くんだ?」と聞くシーンが凄く良い。そのしどろもどろな姿こそがおかあさんで、田中絹代はザ・映画女優。
似ても似つかぬポパイと娘たちに呼ばれる三島雅夫も性善説を信じたくなるような人物で最高。

それでも「貧しくても楽しい我が家」にはしていないところが何といっても素晴らしかった。
2016年 映画鑑賞043 (映画館036)

どこまでも悲しくできるテーマを、軽やかにコミカルで、ドライに、でも、哀愁のアクセントは忘れずに描き上げる。こんなお菓子があったらいくらでも味わいたいと思えるような黄金比の配分。

家族みんなで遊びに行く向ヶ丘遊園地。一見、同時代のルノワールのような爽快な美しさを身にまとっているような場面でも、”おかあさん”がくたびれきっていて浮かない表情、を見せているのが実に素敵でした。

また、香川京子演じる娘が思わぬ形で見せてくれた花嫁姿。見惚れる”おかあさん”が見せた眼差しや顔付きで一番涙腺が緩みました。でも泣かせない。それが成瀬流。母親が娘の成長に心奪われ、恋人かのような顔付きを見せるだなんて知らなかった。
myg

mygの感想・評価

4.0
三島雅夫の葬式の台所、寡婦らが戦死者の話するのと並列で干瓢足りない話するのたまらないな。今川焼/アイスキャンディ/次女の髪の長さなどで連綿たる流れを見せながらどうしようもなく死や別れがあること、でも受け入れていくこと。もう、な。なっ、て。
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