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懺悔のhasseのレビュー・感想・評価

懺悔(1984年製作の映画)
4.2
演出4
演技5
脚本4
撮影4
照明5
音楽4
音響4
インスピレーション4
好み4

○「教会に通じていない道なんてなんの意味がある?」(老婆)

スターリン独裁政権への批判。スターリンをモデルにした独裁者ヴェルラムの死後、その息子と孫が、ヴェルラムに人生を無茶苦茶にされた女性に糾弾され、ヴェルラムの政治責任に苦悩する。

重厚なテーマながら一つ一つのシーンがユーモラスだったり、豊かなイメージに溢れていたり面白い。
ヴェルラムの墓が掘り返され、息子夫婦の家の木に立て掛けられるのが何度も繰り返されるのは滑稽じみている。奥さんが眠る夫の横で色っぽいダンスをするシーンは全く意味が分からない。

回想シーンのヴェルラムは全力でオペラを歌い、2階から飛び降りてお暇したと思ったら息子が貰った十字架を真顔で返しにくる。そもそも彼が市長に選ばれたのは、他の選挙候補者のスピーチが、地下水の故障騒ぎで聞こえず、たまたま彼の番に収まって聞こえていたからみたいないい加減さが心憎い演出だ。

自分の祖父、あるいは親世代の過失を、どこまで責任を感じ、相手に報いてやらねばならないのか? 明確な答えは示されない。ラストの老婆が示唆するように、まずは神に懺悔し、問うべきなのかもしれない。

テンギズ・アブラゼ監督の「祈り三部作」、正直消化不足な部分も多々あるが、荘厳な映像詩と人間の善悪を真っ向から見つめようとするスタイルが気に入った。タルコフスキーやアンゲロプロス級に映像史上で言及されてもよい作家だと思うが、如何せんジョージアの辺境性もあって知名度が低い。作品はどれも普遍的なメッセージを帯びているのに。
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