このレビューはネタバレを含みます
自宅で鑑賞。
2009年公開のSF映画。
監督は「チャッピー」のニール・ブロムカンプ。
ブロムカンプ監督の長編デビュー作にして、個人的に最高傑作。
いや、しかしよくまぁ考えたなぁ。
移民問題をエイリアンに置き換えて、尚且つSF的熱さを加える手腕には感心せざるを得ない。
話はシャールト・コプリー(「マレフィセント」)演じるエイリアン対策課の職員ヴィカスがエイリアンの立ち退き作戦中にエイリアンが所持していた謎の液体がかかったことで徐々にエイリアン化。企業に追われる中で弱い立場にあるエイリアンと共闘していくことになるというもの。
エイリアンといえば「エイリアン」シリーズ含め、敵として描かれるものが多いが、今作では限りなく弱い立場にあるというのがミソ。
どうやら乗ってきた宇宙船が故障し、おまけに上層部が軒並み死亡してしまったことで難民化したエイリアンたち、通称「エビ」。
容姿はそれこそエビのような甲殻に覆われたモンスター型のエイリアンだが、人間
に追い込まれたあげく、難民キャンプで残飯や廃材を漁る不自由な生活を強いられている様はまさに、貧困地の難民のよう。
それに引き換え、人間側、特にヴィカスが勤めている企業の人間は秘密裏にエイリアンの生態を調べ上げ、ヴィカスがエイリアン独自の武器が使えることがわかつた際にはその性能を調べるために実際にエイリアンを標的に実験を行うなど、残虐非道。
これではどちらが血が通っている生物かわからないところがまた面白い。
だから、劇中、人間側の非道を見るたびにどんどんエイリアン側に肩入れしたくなるから不思議だ。
主人公ヴィカスも初めはそんな人間側のキャラクターとして小物感たっぷりにエイリアンをいじめる。しかし、変身が始まり、エイリアンのクリストファー・ジョンソンやリトルCJとの交流によって、徐々に気持ちが変わり、遂にはエイリアンを逃がすために立ち上がる瞬間が熱い!!
それまでの人間としてのプライドや損得勘定をかなぐり捨て、ただエイリアンを助けるために種族の垣根を超えて戦うヴィカス、こんなの滾らないわけがない!
そしてラストシーン、この物悲しさたるや。ハッピーエンドともバッドエンドともいえないこのラストが鮮明に記憶に残っているからこそ、「エリジウム」にしろ「チャッピー」にしろ物足りなさを感じてしまうんだろうなぁ。
SF映画界の新星として次こそ傑作を期待しています!