あんじょーら

第9地区のあんじょーらのネタバレレビュー・内容・結末

第9地区(2009年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

ドキュメンタリー調ではあるものの、設定が未来ですから、いわゆるフェイクドキュメンタリーもの(ですから、監視カメラの映像が差し込まれたり、画面の何処かに時刻が刻まれていたりします)です。ある日アフリカのヨハネスブルグ上空に巨大な宇宙船が下りてきます、そして空中でそのまま動きを止めてしまったのです。何も応答がないままだったので、人類は宇宙船に穴を開けて船内に侵入、そこで見たものはまさに異星人!しかし彼らは普通私たちが想像する高度な科学を持った(持っているのですが、そこはまだ伏せます)異星人ではなく、難民という状態だったのです!!緊急にヨハネスブルグ近郊に異星人地区(第9地区=District 9)を建設、難民キャンプならぬ異星人キャンプが出来上がって・・・そして28年後の世界が舞台です。ここまでを僅かな時間で説明するんですが、その冒頭もなかなか良かったです。


28年くらい経つとエイリアンとの共生がゆるやかに受け入れられています、が、もちろん軋轢が存在し、異星人キャンプ(隔離され、エイリアンはこの施設の外にはほぼいないし、中には人間もいないことになっている)はほぼスラムと化していました。エイリアンはエビ(外見からの連想とスラングとしての呼称)と呼ばれ、蔑まれていました。何か建設的存在ではない状態に見えるのです。好物はあの缶詰ですし。そこで政府(あるいは政府の集合体だったかもしれません)は新たな居住区にエイリアンを移す計画を立てました、そのキャップにエイリアンとの折衝を行ってきたヴィカスを指名したところから、物語は動き出していきます。


エイリアンという存在の、普通に考える刷り込みを覆している部分からして(だってエイリアンなのに、エビとか呼ばれてるし、難民ですよ!)こちらの思い込みを心地よく裏切ってくれてよかったです。この映画はもう見た方と、いろいろ話したくなり、しかも娯楽大作としてパッケージされていますので、間口も広いですし、ある程度ヒットするのではないでしょうか?


エイリアンものの常識を覆されたい方に、近未来モノが好きな方に、オススメ致します。

アテンションプリーズ!

ネタバレありです!ココからは、本当に見られた方でお願い致します。

























楽しかったです、久しぶりに映画館でしたし。でもね、物語の始まり、掴みは最高に面白そう(こちらの予想をいろいろ裏切るわけですし)なのに、ヨハネスブルグで難民キャンプでグロテスクな存在が難民なんて、そりゃ受け手側もどうしてもアパルトヘイト関係を思い浮かべますし、それはイイんですけどね。どうして今、このタイミングなのか、が描かれていないので、そこが気になりました。スラム化した後は確かに仕方が無いかもしれませんよ。でも、曲がりなりにも宇宙船を飛ばせる技術を使いこなせていた(開発したわけでなくとも)のですから、そして言葉が通じるのであれば、もう少し様々な接触が考えられると思うのです。20年かけてエイリアンが密かに収集するよりも、人間側に働きかける手段だって取れると思うんです。また宇宙船が動ける、動かせるなら、エイリアン側にも人類側にもメリットがあるのでより協力できていたとも思いますし。


もう一つ気になったのが、やはり残念ながら結局ドンパチかい!です。最初の段階では出来うるだけ被害が出ないように気をつけていたのが、仕方が無い部分もありますけれど、エスカレートして行き過ぎのように感じました。確かにヴィカスは感染して左手はアレですけど、それだけで全ての機器が動かせるのは少し疑問を挟みたくなりまし、その上でそれほどの科学力を結局持ちつつ、何故難民を続けるのかが分からないのです。せめてココまでヨハネスブルグに設定して、色濃く難民キャンプ的、アパルトヘイト的視線を取り入れるならば、暴力的解決に拘らなくても良かったのではいか?と。


で、本当の怖さは、実はこれだけの科学技術を持ちながら、しかも実はテクノロジーを用いなくとも人を襲って殺せる(クーバス大佐の最後が私は1番怖い~)のであることを合理的に解釈すると、エイリアンより更なる高度な存在がより混乱を招く為に送り込んだエビ型破壊促進兵器なのでは?と勘繰りたくなってしまいます。


と、文句は言いつつ、巻き込まれ型のストーリィとしては、そこに様々な俯瞰要素を(ドキュメンタリー調にすることで)取り入れることでよりヴィカスの陥った状況により乗り易くなりましたし、人間の側、エイリアンの側という視線それぞれから自由になっているのも面白い構造でよかったです。ヴィカスのキャスティングが素晴らしいとも言えます。