カント

放浪の画家 ピロスマニのカントのレビュー・感想・評価

放浪の画家 ピロスマニ(1969年製作の映画)
4.2
1969年(昭和44年)制作。ロシア圏グルジア映画。
グルジアの画家、ニコラ・ピロスマニの奔放な半生を描く。
ピカソは「グルジアに私の絵は必要ない。ピロスマニが居るから」と言った。

19世紀末、ニコラ・ピロスマニは友人との商売に失敗し、ほぼホームレスの様な状況で、居酒屋を転々とする。
請われて看板を書いたり、壁に飾る絵を書いたり、一見、稚拙だがグルジアの風土が産んだ素朴で味わい深い作風の絵を描く。
画題も多岐に渡っていて肖像、風俗、動物、農村風景、歴史画、果ては宗教画まで、何でもあり。
居酒屋のオヤジは飲み過ぎのピロスマニを心配する。「世の中の歩調に合わせろよ!」
それが出来ないからこそ純朴な画才が花開いたのに。

ある日フランスの画家が、グルジアを訪れピロスマニの作品を見て絶賛!
特に動物を描いた作品が素晴らしい。
パリ画壇にピロスマニ作品を披露するものの新聞の論評では酷評。
グルジアのピロスマニを応援してた居酒屋のオヤジ達も、手の平を返したようにピロスマニに背を向ける。
失意のピロスマニ…

当時のパリ画壇では素朴派は受け入れられず、アンリ・ルソーも日曜画家と酷評された。
ピロスマニの描く動物は、アフリカ工芸のティンガ・ティンガにも似たストレートな表現。
ピロスマニの再評価が待たれる所。

ストーリー的には、それなりだけどピロスマニの画業、牧歌的なグルジアの空気を感じる上では素晴らしい映画でした。
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