アンビバレントな感情、これに尽きる。
フリーのカメラマンが教団内に謎の信頼を勝ち得て取材していると言う構造の妙で、視聴者はオウム真理教の側、正確には教団の広報・荒木浩の視点で当時の社会を見ることになる。
否が応でも最悪なマスコミ、最悪な警察に当事者の目線で相対させられるのだ。
だからと言ってオウム真理教の側に100%立てるわけではない。立てられるわけがない。
どこまで行っても彼らは危険なカルト集団でしかない。
だが彼らを近い距離で見ていると心を持った人間だ、ということが分かってしまう。都合の悪い事実に気がついてしまう。
荒木を始めとする信者が不幸だったのは、彼らが他の宗教を選べなかったことだ。宗教なんていくらでもあるのに、オウムを選び、オウムに選ばれてしまった。
そんな彼らの不幸に寄り添ってしまいそうになる、ある意味で危うい映像だ。