Koichiro

日本のいちばん長い日のKoichiroのレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(1967年製作の映画)
4.2
宮城事件を軸に、ポツダム宣言受諾から玉音放送までを描いた戦争映画。
題材と俳優の熱演ぶりが満点だと思う、撮影の華やかさには物足りないところがあるけれど。特に三船敏郎が演じた阿南惟畿の板挟み、苦悩には魅せられるものがあった。汗の滲みかたや眉間の皺に、三船の怪優ぶりが現れていて素晴らしい!
あの感じだと、阿南陸相の生涯についても、もっとよく学びたくなるよね。

題材については極めて重要。わずか1日の間に政治と軍の論理の狭間でどれだけの人間が葛藤して無条件降伏に至ったかがよく分かる。そして、自分なりにキーだと感じたのが、死者=英霊に対する「負い目」感情。死者に思いを馳せると同時に、奮戦と自らの死の運命までも確定させようとする心の動きが恐ろしいと思った。政治的手続き、天皇大権の重要さを認めてなお、近衛兵たちがクーデターを試みたのには、死者への禊、徹底抗戦で命を使いきりたいという願望があったんじゃないか。怖いな。

役所広司らの出演でリメイクされた方を見てみたいけれど、先に大宅壮一のノンフィクションから製作された点で、こちらを推したい気持ちになると思う。

ちょっと笑ってしまったセリフ↓
「師団長が死亡されました!」「なにぃー!」
笠智衆(小津安二郎映画でいつも父親役)が鈴木貫太郎首相を演じているのには、違和感で笑ってしまった。鈴木はあんなに穏やかな政治家だったのか?軍人のような側面が皆無だった、笑った。彼のセリフ。
「もう年寄りの出る幕じゃないよ、これからは若い人たちの時代だ」
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