2017.12.16 初見
2019.7.6 午前十時の映画祭にて再見
息抜きできるカットが無く、初めて観たときと同じくらいの緊張感と放心。膨大な科白量にも関わらず説明過多は感じない。「日本男子の半分の2000万人を特攻に出せば必ず勝てる」「死ぬよりも生きることの方が勇気がいる」「日本帝国のお葬式なのだから」橋本忍脚本
資料映像の並べ方がすごい。原爆で焼尽に帰した広島と長崎、親子らしき焼け焦げた遺体。犠牲者の数を示すスーパーと共に映される累々と重なる遺体。
エンドクレジット、昭和天皇役の松本幸四郎以外は三船敏郎も笠智衆も岡本喜八作品常連役者も登場順ベタ並びなのがいい。
日本人の空気主義や玉砕気質や戦争の無意味さを心底痛感している世代の表現はたびたび体感しておきたいし、私が言えたことではないが多くの人に観てもらいたい。映画が終わった平和な午後にモスバーガーを食べながら涙が出てくる。
2020.8.11 Amazonプライムにて再見
岡本喜八の細かいカット割の凄さは編集点の凄さである。他ならあと2フレームは待ちそうなところをスパッと切り意表を突いたカットにつなぐ。そしてコントラストの強い白黒画面に戦後のいい顔役者(今こんないい顔の役者いない)が勢揃いしており、長尺の本作は少しもダレることがない。
しかし阿南陸相を三船敏郎が演ずるのはやはりかっこよすぎるのだろう。冷静に見ればその行動は無責任でもある。結局は決着がつかずだいたい御前会議に委ねられるのも皮肉だ。
集団は得てしてたった一つの原因だけではなく、様々な人とその思想行動によって少しずつねじ曲がり様々に拡大濃縮され取り返しがつかなくなる、その最たるものが先の戦争だった。日本人のムラ社会体質が皇国主義という狂気の集団心理として肥大していったことがこの映画でよくわかる。
黒沢年男、天本英世らの過剰な演技や、二本柳寛演ずる大西軍令部次長の「あと二千万、あと二千万の特攻を出せば必ず勝てます」「もうあと二千万、日本の男子の半分を特攻に出す覚悟で戦えば必ず!」の科白によりその狂気はわかりやすく表現される。
勿論彼らだけでない。終戦前日児玉基地での特攻出陣を見送る市民の群衆も、石山健二郎(どことなく戯画的な風貌が好い)演ずる、陸軍省将校の叛乱を制した田中静壱東部軍司令官も、狂気の犠牲者であり実行者である。その田中静壱大将は終戦後の8月24日に自決している。後年の我々は短絡に責めることはできないし、実際その狂気が再び我々を無力化させながら近づいてきていることに警戒し続けなくてはならない。