ベビーパウダー山崎

ハンナとその姉妹のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

ハンナとその姉妹(1986年製作の映画)
3.0
死に怯えて道化師の役割を演じるウディ・アレン。わざわざ眼鏡までかけてアレンの分身を演じるマイケル・ケイン。妹に夫を寝取られるミア・ファローは生々しくてキツイ役。ダイアン・ウィーストはダイアン・キートンに顔立ちが似ていて、アレンがリアルで好きなタイプ。
マックス・フォン・シドーが演じる、俗を嫌う分かりやすい芸術家はアレンからのベルイマンRespect。『インテリア』でリヴ・ウルマンを出演させることは出来なかったが、マックス・フォン・シドーは自分の自慰行為的な作品に引っ張り出すことに成功した。シドーを演出しながらアレンは満足しきって果てたと思う。
ウディ・アレンの映画を見ていると、何年に撮られた映画なのか、何年代が舞台の映画なのか分からなくなる。86年ってオリバー君が『ウォール街』とか撮って、アメリカ映画がギャンギャン騒いでいる時期でしょ、その荒波のなか、こんな内向きの人間ドラマをじっくり撮っているアレンの図太い感性が異常。表現者として感心するし、大衆によく受け入れられたと思う。
登場人物は多いが、どのキャラクターもアレンでしかないので個を際立たせる群像劇のようには見えない。アルトマン映画と対極に位置する作家。僕はどちらも好きですが。アレン映画はエンドクレジットに入るタイミング絶妙。浮気をしたりヨリを戻したりしても、説教も教訓もなにもないのが良い。グルーチョ・マルクスは偉大、ただそれだけ。