たく

弓のたくのレビュー・感想・評価

(2005年製作の映画)
3.5
6歳の時に漁船の老人に拾われた純粋無垢な少女の成長と解放を、何かの寓話みたく描いてる。
キム・ギドク監督は有名な「サマリア」を観てなくて、唯一「嘆きのピエタ」がキツい映画だったのを覚えてるくらいだけど、やっぱり一筋縄ではいかない難解さがあるね。

少女は囲われるように大事に大事に育てられてて、近づく男どもに弓矢を放って遠ざける老人の執着がどうみても異様。少女はその歪んだ愛を素直に受け入れてる感じんなんだよね。二人は彼女の17歳の誕生日に結婚することになってて、老人が夜寝る時に必ず少女の手を握ったり、婚姻時の晴れの衣装を箪笥から時々出して愛でてるのが気持ち悪い。二人にはセリフが一切なく、見るからに危険な弓矢占いの結果を伝えるのもヒソヒソ話で何を言っているのか観客には分からない演出になってる。
この不思議な絆で結ばれてるように見える二人が、別の漁船から来報した好青年の登場をきっかけに激変していくのが怖い。
それまで外の世界を知らず老人に全幅の信頼を寄せてた反動のせいなのか、老人をにらみつけるようになり、今までのようなスキンシップも拒否していく。

終盤はおとぎ話みないな感じで不条理展開となる。少女が弓矢占いの結果を受けて青年と帰ることを決断するまでは、まあ当然そうなるよなーと思ってたら、それを裏切る展開からの神話的な演出にぽかんとなった。
まあ、少女の成長物語であることは間違いないんだろうけど、老人の存在が意味しているものが良く分からなかったね。
題名の「弓」は作中に胡弓の演奏と弓矢で登場しまくってて、ラストの文章にもあったようにピンと張った弦に強さと美しさを象徴させてた。
たく

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