冷蔵庫とプリンター

幸福(しあわせ)の冷蔵庫とプリンターのネタバレレビュー・内容・結末

幸福(しあわせ)(1964年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

 不自然なまでに美しいロケーションとカラーリングで彩られた「幸福」。
 家父長制社会における男性の幸福とでも言えよう、従順な妻と物分かりの良い愛人、妻が死んだら愛人を後釜に据えてめでたしめでたしというストーリー展開や、「嘘はつけない」と女性を花や林檎に喩える空虚な男フランソワ(名前すら空虚!)に痛烈な批判精神を感じる。しかし凡百の映画監督とは違いそれをヴァルダはそれほど露骨には描かない。独創的でテンポの良い演出で純粋な映画の面白さを提供しながらも、徐々に朽ちていく花や不安を煽るモーツァルトの旋律によってその矛盾を炙り出している。傑作。