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忍者武芸帖 百地三太夫のとりのレビュー・感想・評価

忍者武芸帖 百地三太夫(1980年製作の映画)
4.0
真田広之が主演のバリバリ硬派本格忍者アクション映画!と思い込んで観たら、とんでもないシロモノだったでござる。
忍者アクションには違いないしめっちゃ気合い入ってるんだけど、アイドル映画の側面のほうが強すぎた。
しかも制作過程での迷走が出まくってて、破天荒を通り越して支離滅裂、統一感まるでなし。なんでもありのアホ映画。でもアクションだけはぶっちぎりで全員本気。

ダイヤモンドの原石である真田を磨き損なってるようにしか見えなくて変な笑いしか出ない。
和製ジャッキーチェンを目指してたのかカンフーまでやらせてる。
バキバキに鍛え上げられた美しい肉体はジャッキーを凌駕しており、むしろブルース・リーに近い。
華麗なハイキックや敵に囲まれての立ち回りはため息が出るほどの優美さで、これはジャッキーにもリーにもない部分だと思う。
その方面だけ推し進めた作品になれば良かったんだろうが、甘いマスクのせいで軽いアイドル映画に仕立てられてしまったんだろうな。テーマソングまで歌わされて、要所要所で流れるせいで真剣なシーンぶち壊し。笑いが込み上げる。しかもシティポップの杉真理が作曲してるので爽やかさが凄まじい。

なんでもやらされる真田に観ていて同情を禁じ得ない。
唐突に始まる炎の舞は無駄に長いし、忍者じゃなくサーカスですやんアクション、変態チックな拷問シーン(手下も含め衆道の匂わせか?)などどういった客層をターゲットにしているのか。
かと思えばお城や樹上や馬などから落下しまくったり、軽い雰囲気からまるで割に合わない命の張りっぷり。

全体がキラキラ少女漫画みたいなのに、千葉真一だけ劇画調ゴルゴが混ざってて異様。
真顔でヘンテコトリオ攻撃とかどうかしてる。あの微妙にプルプルするトーテムポール今思い出しても吹き出す可笑しさなんですけど。
丹波哲郎や夏木勲はそれなりに馴染んでたのに、千葉だけ浮きまくってて違う映画の二本立てみたいだった。
結局、誰が主役をやっても千葉真一の映画になっちゃうんだよね。
JACからは他にも数人売り出そうとしたけど、結局真田以外パッとしなかったのは制作側のマーケティングが間違っていたんじゃないかな。この映画を観てしみじみそう思った。

どういう心構えで観ていいのか戸惑ったまま終わってしまった。当時の真田はそこまでアイドル視された存在ではなかったような。
森の中や河原での大規模な戦闘シーンは見応えたっぷりでそこは本当に良かった。
志穂美悦子の実践ヌンチャクも。
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