かーくんとしょー

フォレスト・ガンプ/一期一会のかーくんとしょーのネタバレレビュー・内容・結末

2.8

このレビューはネタバレを含みます

傑作と名高く、トム・ハンクスのユーモアと情熱溢れる演技が本当に素晴らしいのだが、好きになりたいと思いながらどうしても好きになれない作品。
決してこの作品が障がい者を侮辱しているとは私は思わないが、障がいという題材を選んだ以上踏み込んでほしい〈それ以上〉を巧妙に避けているように思えてしまう。

いわゆるアメリカンドリームの一種だが、フォレストが成功を次々と掴むのは、彼の足の速さに始まり、誠実さや一生懸命さという個人的資質に依る。
ここに障がいはどう絡んでいるのかが曖昧で伝わってこない。
(足が速くなる一因ではあるが、生まれつき足が速い人間なんていくらでもいる。)

フォレストは障がいで知能が低い故に常に真っ直ぐ走り正面突破するが、それは障がい者でないとできないことか。
極端な話、アホみたいにポジティブな主人公でも変わらないのなら、障がいというデリケートなものをあえて扱う必要はあるのか。

フォレストは障がい故に幼い頃は少しイジメられているが、その後は正面突破に次ぐ正面突破、そして転がり込む幸運と友の理解、母と恋人からの無償の愛。
障がいという要素を入れるのなら、もっともっと上手くいかない時期だらけのはずだし、ここまでトントン拍子ではファンタジーだ。

本作の主題が美徳の齎す幸運のファンタジーならば、前述のとおり頭がハッピーな人間を据えれば良かった。
私は観ていないが「イエスマン」とかいうハッピーそうな映画があった気がする。

私はこの映画から受け取るべきメッセージについて、「誰しもコンプレックスを抱えて傷付くこともあるけれど、真っ直ぐ誠実に走り続ければ、幸せな道は開ける。人生はその繰り返し」と読んだ。
そう、結局のところ障がいを扱わなくても充分に描けるという疑念は晴らされなかった。

もう一つ、作中でフォレストは〈したい〉ことを全力でし、結果として幸運を手にする。
だが、彼は彼が〈すべき〉ことは為していただろうか----言うまでもなく恋人・ジェニーのことだ。
〈すべき〉ことを彼ができなかったのは何故か。
私はここで初めて、本作が障がいを扱ったことの明確なマイナスを感じてしまった。

良いことは、障がいの有無は関係なく、誰にでもできる全力疾走で呼び込むことができる。
悪いことは、障がいがあるフォレストにはそこまでは荷が重かった。(……健常者のポジティブシンキング・イエスマンなら解決できたかもしれないけれどね、と。)

written by K.
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