デニロ

背徳のメスのデニロのレビュー・感想・評価

背徳のメス(1961年製作の映画)
3.0
シネマヴェーラ渋谷の特集「脚本家新藤兼人」。チラシによると370本ものシナリオを書いていたそうだ。『昭和枯れすすき』みたいなロクでもないストーリーを面白くする稀有な才能に1975年の若きわたしは感動したものです。

医療ミスのドラマ化と思って観に出掛けたら、序盤は医療ミスに纏わるサスペンスで、それが徐々にわたしは殺される、犯人は誰だという田村高廣のサスペンスになり、最後は原作者松本清張のお得意というか嫌な部分の全面展開女の愛憎で締めくくる。

田村高廣が何やら自暴自棄の生活をする医者で、看護婦を性の処理に使うは宿直中の女医を凌辱するはしたい放題。でも、医療は分け隔てなく公平にやっていると嘯く。その上司が傲岸な山村聰。この人物の設定は何歳だったんだろう。風貌から60歳代にしか見えないが、四人目の子どもが産まれた際この歳で子供もなんですが女房が堕ろさないもので等と言っているところをみると40歳代なんだろうか。1961年の40歳代と今どきの40歳代は果てしなく別人種。山村聰に弄ばれた末にからからに乾いた女の成れの果てこの病院を辞めたらどうだね云々と罵倒される久我美子が、そう言っちゃ悪いがなかなかのはまり役。

病院だけではなかろうが狭い世界で生息していると歪んでいくというのはその通りなのだと思う。映画ばかり観ていると視野が狭くなるという、そんな人間物語です。

1961年製作公開。原作黒岩重吾。脚色新藤兼人 。監督野村芳太郎 。
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