マリオン

ゴジラのマリオンのレビュー・感想・評価

ゴジラ(1954年製作の映画)
5.0
日本を代表する怪獣ゴジラ第1作目。小さい頃から怪獣図鑑をよく読んでいたほどゴジラシリーズは大好きだったのだが実は今回が初鑑賞。ゴジラの災厄というパニック映画という側面とそこに込められた戦争のメタファーという側面が絶妙なバランスで展開される。これが60年前の映画とは信じられないぐらいに面白い傑作だ。

まず円谷英二の特撮技術を中心とした演出が素晴らしかった。ゴジラの恐ろしさがよく出ているのだ。ゴジラが初めて姿を見せるシーンはあくまで頭だけにとどめ、見る側をじらしてから東京で大暴れのシークエンスに突入というこのじらし演出でゴジラの迫力がさらに強調される。そして2回目の襲撃で完全に絶望に向かわせるという展開の巧みさが恐怖と絶望を演出する。またリアルな美術、ゴジラの質感もまるでそこにあるかのようでモノクロの映像と相まって本当にそんな災害が起こったかのように錯覚してしまうほどだ。それでいてゴジラがかっこよくも映っていてゴジラの魅力がこれでもかと出ているのだ。

そして物語全体を貫くテーマである戦争、原爆の恐ろしさもすごくよく現れている。ゴジラの存在が災害、戦争、原爆の残酷さを、秘密兵器オキシェジェン・デストロイヤーを開発した芹澤博士からはダイナマイトを兵器として使用されてしまったノーベルや原爆に反対したアインシュタインなどの科学者の悲痛を連想させるし、破壊された市街地や病院の惨状は否応なしに戦争の悲しさを感じてしまう。終始悲愴さが漂うアンチカタルシスな作風は伊福部昭の音楽しかりこの物語の根幹を貫く崇高なテーマ性をブレさせない。

自分はこの崇高なテーマ性とエンターテイメント性がきちんとミックスされているということにすごく感動した。だからこそ今でも愛され傑作と呼ばれる所以なのだと思う。他にも語り口がまだまだたくさんあると思うし、今回デジタルリマスター版を劇場で見れて本当によかった。
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