生活に窮する妊娠中の黒人シングルマザー。そんな彼女の過酷な日々と募る不安を描いたヘビーな作品。ままならない状況に思い詰められる母の姿は見ていて苦しい。
貧困層のシングルマザーであり、黒人女性でもある主人公を取り巻く環境は厳しい。2人の子供は児童養護に預けられ、行政の審査を通らないと連れ戻せない。経済状況が苦しいだけでなく、薬物依存症であるためだ。更生プログラムに参加するも、今度は仕事の時間が捻出できない。もうじき新しい命が生まれようとしているのに。養子に出そうと思っても、なかなか決心がつかない。彼女はとにかく生きるために必死で、子どものためのおむつを盗むことも厭わない。そして、いつも不安に苛まれている。
責任能力のない親から子どもを引き離す制度は安全のために必要だ。でも、本当にこのままでいいのだろうか。形ばかりの補助に苦しめられた果てに子どもに会えなくなった親は途方にくれ、引き離された子どもは親の愛を知らぬまま荒んでいく。更生プログラムで出会うグループセラピーの面々も親から引き離された子ども時代を経て、親と同じような状況に置かれているではないか。
結局、自助や自己責任で切り捨てるシステムに大きな問題があるよね…。