けいすけ

ゴジラのけいすけのレビュー・感想・評価

ゴジラ(1954年製作の映画)
3.7
1954年に公開された怪獣映画の金字塔。
あまりにも有名な「ゴジラ」シリーズの記念すべき第1作である。
「ゴジラ」シリーズといえば、突如現れた大怪獣ゴジラや、モスラ、キングギドラといった怪獣たちの壮絶なバトルを思い出すだろう。しかし、今作ではゴジラと人間との戦い、主に人間側の右往左往が描かれる。
注目すべきはこの映画が公開された時代背景にある。1954年といえば、原爆投下・ポツダム宣言から10年も経たない戦後。米国による水爆実験によって「第3の被爆」を経験した第五福竜丸事件や、自衛隊発足といった出来事があった年である。暗澹とした戦後からの復興や反戦争・反核の運動が澎湃する中、その後歴史に大きく名を残す怪獣が日本に誕生したのだった。
映画では当時最新鋭の武力を持ってしてもゴジラには全く敵わず、東京は火の海と化す。まさにそれは東京大空襲を彷彿とさせる。さらにゴジラは放射能によってエネルギーを得ており、空襲・放射能という、まさに1945年の人々の恐怖の権化のような存在だと言える。
殺してはならないと嘆く動物学者に脇目も振らず、ゴジラを駆除しようとする政府。そこには自然をコントロールしようとする人間のエゴが滲み出ている。

<ネタバレあり>
今作で興味深かったのは、ゴジラが襲来したときの人々の様々な動きだ。政府は先述のように武力を持ってして駆逐しようとする。かたや、祈りという宗教を用いて天災を鎮めようと願う人々。結局無惨にも国会議事堂は踏み潰されることとなるが、ゴジラの息の根を止めたのは新たに開発された「科学」であった。オキシジェン・デストロイヤーを開発した芹沢教授はゴジラと共に心中する形となったが、山根博士の最後のセリフ
「あのゴジラが、最後の一匹だとは思えない。もし、水爆実験が続けて行われるとしたら、あのゴジラの同類が、また、世界のどこかへあらわれてくるかも知れない・・・」、このセリフによって不気味な余韻を残して本作は終了する。それは鑑賞する人々に何かを問いかけているのだろうか。
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