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カリスマのmitakosamaのレビュー・感想・評価

カリスマ(1999年製作の映画)
3.3
黒川清の監督作。劇場で観た時は160分くらいに感じたけど、100分くらいしか無かったのか…。それくらい時間経過がゆっくり感じられる作品だった。

基本「回路」と話のプロットは共通してる。世界の秩序を支えているものが無くなり崩壊に向かうという終わり方。

今作では“カリスマ”と呼ばれる樹がそれにあたる。
カリスマが周辺の植物を枯らしてしまうので切り落としたい植物学者。
カリスマが世界の秩序だと頑なに主張し強硬に守る若者。
人質と犯人両方を守れなかった謹慎中の刑事(役所広司)が訪れ間に入る。彼がストーリーテラーにもなってるね。

なんというかロケ地がどっかの野っ原で、ぶっちゃけ学生映画の様な安い絵作りだったんだよな。池内博之演じるおかしな若者が樹に水を塗ったりしてて「なんだこりゃ?」って前半だった。

ただ、中盤からみるみる引き込まれて行ったんだよな。淡々とした日常が少しずつ崩壊して行くのが本当に薄気味悪い。

また、風吹ジュン演じる植物学者の部屋が観葉植物で満たされているのも興味深い。回路でも観葉植物の会社が出てきていることから、モチーフとして隠されている意味があると考えるのが自然だろう。
おそらく人工的に作られた箱庭の自然=縮小された世界の暗喩なんでしょうな。人知の及ばない世界との比較される、作られた自然。

回路では世界の秩序が壊れた象徴として飛行機落下のシーンがあるが、今作では戦争のように焼ける町の姿で現れる。

やはり回路とセットで見るべき映画だと思う。その方が両作が補完し合えて判りやすくなる。
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