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それからのbombsquadsのネタバレレビュー・内容・結末

それから(1985年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

20221015 自分用忘備録
明治の世に恋愛などなかったが、漱石は「近代の恋愛」を明治の道具立ての中に成立させようと生真面目に四苦八苦した人だった。
そこで頭でっかちなことになり、主人公は高等遊民ということになり、そこにうじうじぐだぐださせてみて、ときに近代化の不可能性を嘆かせてみたりしつつ、煮えたか煮えないか分からない加減をもって「うむ、恋愛であった」などとする 笑
しかし世間は明治のままであり、高等遊民は現実に向き合うや高等遊民ではいられなくなり、途端に「恋愛」は破綻するか渦中の2人が破滅に向かうかする。「ああ、駄目だった」それが漱石の描く恋愛だ。世話物ではない高等遊民の恋なので、あくまで砂上の楼閣でしかないものだ。
それゆえ、今日の目で見て「それから」は索漠たる物語だ。どうしようもなくつまらない。しかし、そのつまらなさを端正丁寧に掬い取っているこの映画は、漱石の再現に成功しているという意味で素晴らしい出来だと思う。不穏ですらある。
「よくできたつまらなさ」というものがあることを教わった。世間の評価が高いのはそのあたりの事情からではないだろうか。しかし、つまらんものはあくまでつまらないので自分の評価は3.2
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