アトミ

瀧の白糸のアトミのネタバレレビュー・内容・結末

瀧の白糸(1933年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

60点

明治23年の初夏。
北陸一体を従業する見世物師の中で「瀧の白糸」という水芸の太夫がおり、巷では北陸一の美人、水芸師のトップと言われ、自負し、大変人気があった。

金沢で瀧の白糸一座の公演。
出番を待つ座長瀧の白糸は3日前からニヤニヤと思い出し笑いしていた。

3日前。
白糸が乗る文明開化の利器「馬車」を人力車が追い越して行った。
乗客はブチ切れて青年御者にハッパをかける。
が、憮然な態度。
白糸はお小遣いをチラつかせ、ヤル気を出させようとしたが憮然。
白糸もブチ切れてイヤミたらたら。
と、青年は頭に来たか馬にムチを入れまくり。馬は走りまくる。
スピードにビビった乗客は「ゆっくり走ってくれ~!」と青年にお願い。が、無視。
人力車はまくったものの馬車は目的地に着く前に壊れてしまう。

お手上げで困り果ててる青年を見てら白糸は大笑い。
青年は馬の蔵を外し、「夕方までに到着すればいいんだろ!」と白糸を裸馬に乗せゴイゴイ走る。

目的地に到着。
が、気絶してしまっていた白糸。
青年は口移しで水を与えようとしたがギャラリーがいたため顔に吹きかけた。
気がついた白糸を見て、青年は帰って行った。

このインパクトある青年の事が気になる男嫌いの白糸。
この辺りでは彼のことを「欣(きん)さん」と呼んでいると知る。
と、白糸の傍に「法律の本」が忘れられてるのを発見。

この本をチラチラと眺めてはまた会えることを楽しみにし、3日間ニヤニヤしてる白糸だった。


出番。
ヤンヤヤンヤの大盛況!
白糸の見事な水芸に釘付けの観客。
そしてクライマックス。舞台一面の水しぶき。
観客は興奮の坩堝。万代の拍手の内に幕が降りる。


真夜中。
眠れない白糸は川原へ出た。
橋の上で寝てる欣さんを偶然発見。
白糸は運命を感じ、ぽっとなりながら欣さんを眺める。ちょっとつねって起こしてみる。
目を覚ました欣さん。が、白糸の事を全く覚えてない。
欣さんは白糸の説明で思い出した。

白糸は不機嫌な欣さんに金沢にいる理由を尋ねると、「きみのためにあっちを浪人した(仕事をクビになって無職)」と答えた。
欣さんを独り者だとしり白糸はちょっとアプローチを仕掛けるが、真面目硬派な欣さんは戸惑って避ける。
金沢でハローワーク中の欣さん。元々は金沢の士族だったが3年前父を亡くし、学校も中退。一昨年には母も亡くし独り者。馬車会社へ住み込みで働くが本望ではない。彼には夢(法律を学ぶ)があったが、浮世だと諦めていた。
白糸は欣さんが東京へ行って法律の勉強する為の金を貢がさせて欲しいと頼み、傍にあった縁結びの地蔵に手を合わせ、欣さんを楽屋に連れて行く。
欣さんはあまえることを詫びて自己紹介する
村越欣弥(25)。白糸は水島友(24)。
白糸はとりあえず30円渡し、東京へ急がせた。
欣弥はお礼を言い、必ず恩返しをするゆえ希望を言って欲しいと白糸に尋ねた。
白糸は「お前さんに可愛がって貰いたい!」と頬を赤らめながら口にし、2人は結ばれる(処女)。

朝。
欣弥はのぼりや看板を見て彼女が瀧の白糸だと知る。
白糸はあなたといる時は堅気の水島友よと言った。
2人は人力車を相乗りし金沢駅で別れた。


2年の歳月が流れる。
真面目な欣弥は勉学に励む。
ある高等官の門前の一部屋を借りる事ができ、面倒を見てくれるおばさんがいた。

冬になると水芸はお払い箱。仕事が無く(冬枯れ)なってしまい収入ゼロ。
が、白糸は欣弥が勉強を終えて帰って来たら一緒になることを夢みて出来る限りの金を仕送りした。

そんな中。
役者仲間のお銀(旦那南京出刃打の南が高利貸しに借金まみれ)が東京の母が死にそうだと白糸に金を借りに来た。
白糸は仕送りの金を渡す訳にはいかないと突っぱねたものの結局金をやってしまう。
と、その夜。お銀は若い座員と駆け落ち。
様々トラブルがあるものの白糸は欣弥だけが心の支えだった。

そんな中。
高利貸し岩淵剛蔵は白糸をモノにしようと南に相談したが、南は白糸ではなくナデシコを薦めた(売り飛ばす)。

久しぶりに小屋オープン。
芸人らも張り切るが客はまばら。
これではらちが開かないゆえ、番頭は柏崎へ営業へ出向くため、一座の全財産を白糸に預けた。

南が出番を終え、白糸が入れ替わりに舞台へ上がる。
と、奈落からシンゾウが顔を出しナデシコ(南京出刃打のアシスタント。若い2人はラブラブ)を呼ぶ。
ナデシコが岩渕に買われた事を知ったシンゾウは「金さえあれば、、、」と嘆いた。
と、南に見つかりシンゾウは白糸のもとへ引っ張られて行く。
南は白糸にウチの商品に手を出した落とし前をつけろと要求。
白糸は若者2人の事だから仕方がないと突っぱねた。
なんやかんやでとりあえず今晩、ナデシコは岩淵の所へは行かなくて済んだ。

夜中。
シンゾウとナデシコは駆け落ちしようとした。
と、白糸が目を覚まし、金を渡し、裏の小舟で2人を見送った。

翌朝。
2人が消えた事に気づいた南は白糸にブチ切れる。
が、白糸は単なる言いがかりだと軽くあしらう。
このままでは芸もできない、金もない南は泣いて白糸にすがる。
白糸は手打ちする条件で金を渡した。
が、足らないと不貞腐れ南は白糸の部屋から出て行った。

結局、一座の金を全部使ってしまった白糸。
人助けをしたと呑気に笑っていたが番頭から柏崎の公演が決まらなかったと聞き真顔になる。
卒業間近だが仕送りできない、一座の者への給料も払えない。
白糸は金沢でなら何とかなるかもと微かな望みを持つ。

白糸は仕送りが遅れてることを正直に手紙に書いた。
欣弥はこれ以上迷惑はかけられないと自分で工面する事を返信した。

番頭は客で来ている輸入問屋の主が、色気抜きで金を貸すと言ってると白糸に話す。
白糸は主の屋敷に相談に行く。
が、結局主が色気を求めて来たため白糸は平手打ちをカマシてブチ切れて帰る。

半月後。
芸は売っても、体は売らない!と啖呵を切った白糸だったが「言いなりになる」という条件で岩淵から300円借りる。
岩淵にヤラれた白糸はその帰り道。
5~6人の男に襲われ、金を盗まれてしまう。
と、その場に南の商売道具の出刃が落ちているのに気づいた。
岩淵と南がつるんでいた事がわかった白糸はブチ切れて出刃を持ち、岩淵屋敷へ戻る。
白糸が帰ってくることがわかっていた岩淵は白糸をまた可愛がろうと襲いかかる。
咄嗟に白糸は岩淵の脇腹を出刃で刺してしまう。
岩淵死亡。
白糸は机の上にあった金を手にし逃走した。

捕まれば死刑となってしまうと考えた白糸は一目だけ欣弥に逢いたいと金沢駅で夜行に乗り込む。


そんな中。
凶器の所有者南が逮捕された。


あれから3年前。
東京へやってきた白糸。欣弥のもとを訪ねたが留守だった(今度務める事になる役所の上司と出張)。
絶望の白糸。おばさんにお金を託す。
が、おばさんから頑張っている欣弥の話、仕送りしてくれてる大切なお姉さんの話を聞き白糸は嬉しくなった。
が、白糸は表で待ち伏せていた刑事に逮捕される。

そして白糸は護送される列車から飛び降り自殺をはかる。
が、奇跡的に傷一つなく、近くにあった蕎麦屋に逃げ込むと何とかシンゾウとナデシコの店だった。

蕎麦屋にやってきた刑事が家探し。が見つからない。刑事は白糸が来たら通報するようにと言い残し去る。
シンゾウとナデシコは命に変えても白糸をかくまうと誓う。
が、また刑事が現れ、結局逮捕されてしまう。


白糸が逮捕されて金沢の町は大騒ぎ。

そんな中。
取り調べを受ける南。
白糸から金を盗んだことは認め、出刃は落としたと自白する。

取り調べを受ける白糸。
白糸は南から金は取られてないと言い張る。
が、刑事は白状するなら放免になるかもと持ち出す。
が、白糸は黙秘する(金の使用目的を質問されているので話せない)。

死を覚悟した白糸ではあったが、一目だけでも欣弥に逢いたいと想う。


岩淵殺人事件の公判が近づき、東京から凄腕新任検事代理が赴任するという記事を読んだ金沢市民は犯人は南か?白糸か?と大騒ぎ。


そんな中。
白糸は新任の検事代理と面会。
欣弥だった。
白糸は涙が溢れ出す。欣弥は白糸に心からの礼を言った。
望み(一目逢う)叶った白糸に未練はない。
自分が罪人だと白状した。
面会時間が終わり、白糸は獄舎へ連れて行かれた。

欣弥は「あの金」が事件に関係していたとしたら自分のせいで、白糸は被害者だと考え、辞職願いを書き、白糸に変わって法廷に立つ決心を獄舎の白糸に伝えた。
が、そもそも欣弥を偉くすることが白糸の目的。これでいいんだと白糸。
その強い思いに欣弥は検事としての仕事をしっかりやるべきだと決心した。

公判。
傍聴席は満員。
裁判官の中に欣弥の姿もあった。
白糸は誓いを立て、欣弥が訊問する。
欣弥は白糸は「瀧の白糸」という名代の立派な芸人であるゆえ、名に恥じぬよう何もかも正直に答えなさいと諭す。

白糸は大切な人への仕送りが滞り、岩淵に300円借りたが南に取られてしまい、落ちていた出刃を手に岩淵宅へ行ったがレイプされそうになり抵抗したところ誤って刺してしまった。そして机の上にあった金を取ったと正直に話した。
白糸は死刑判決を受け、法廷で舌を噛み切り自殺した。

そして。
欣弥も白糸の後を追うように2人が出会ったあの橋の下でピストルの引き金を引いた。





というお話。
必ず冬枯れという厳しい期間が必ず訪れる(破綻フラグ)とわかっててなんでわざわざ仕送り約束したのかね?
序盤の感じなら白糸はめっちゃ金持ちな印象を受けたから突然の貧乏が何か強引に感じる。

本当なら白糸は情状酌量の余地ありなんだろうかね?
多分観客は罪を軽くしてやりたい側だと思うが序盤で白糸が浮世浮世言ってるからシッカリ浮世感を出さなきゃ言葉に重みが無くなるからあのオチで正解だとは思うけどこれも強引感は否めない。

白糸の自殺の描写を含むラスト辺りが欠落してるようでバタバタと物語が終わってしまう。(活動弁士が語るも味気ない)。
結構重要なシーンだと思うので「無い」となるとちょっと点数下がるかな。


PS
活動弁士が語ると物語が理解しやすくはなるが深みがなくなるからあまり好きではない。
アトミ

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