アトミ

この世界の(さらにいくつもの)片隅にのアトミのネタバレレビュー・内容・結末

2.5

このレビューはネタバレを含みます

50点

8年12月。
広島。
ぼーっとした天然女子すず。
風邪の兄に変わって海苔を送り届ける。
途中乗せてもらった舟の上。
兄(ヨウイチ)と妹(スミ)へのお土産を何にしようかと妄想しニヤける。
街にはチョコ、キャラメル、ヨーヨー等沢山のお土産候補があり、にやけながら1点見つめでぼーっとする。


『この世界のさらにいくつもの片隅に』


すず宅。
すずが1点見つめしていたのは「道に迷ってたから」だと語る。
と、狼男みたいなバケモノ大男のオッサンが現れてすずを連れて行く。望遠鏡を渡され、背負ってる大きなカゴの中から行先を探すすず。
その大きなカゴの中には少年がいて「ワシらは誘拐されたんじゃ」と話し、すずは「弱った夕方に鶏の餌やらにゃいけんのに」と困る。少年は「父さんと汽車で帰らんといけん」。オッサンは「夜が来る前に帰らんとえらいことになる」と困る。
すずは海苔を使って月や星の形にくり抜き、望遠鏡に取り付け、オッサンに覗かせる。
オッサンは夜になったと勘違いし、眠ってしまう。
少年は「こいつも晩御飯がなくなって可哀想じゃ」とキャラメルをオッサンの手に持たせ帰って行った。
のだというお話を絵を描きながらスミに聞かせた。喜ぶスミ。
が、すずはいつもの「妄想」だと考える。


10年8月。
おばあちゃん家に行き墓参り。
仰向けでお昼寝すずは天井の板目を指でなぞる。と、天井の板を開けてボロ着女の子が降りて来て食べかすのスイカを食べ始める。
すずはおばあちゃんに新しくスイカを切ってもらって持ってくるが女の子は消えていた。
「着物も置いてあったら着に来てかね?」と気遣うすずを「やさしいね」と撫でるおばあちゃん。

夕方帰り道。
ヨウイチは「それは座敷童子じゃ」と答える。すずは景色も人も優しく霞んで見えた。

夜。
座敷童子のために浴衣を置いてきたと聞いてすずにゲンコツするヨウイチ。
鬼いちゃんが怖いのも忘れていた。


13年2月。
早朝。
すず達は海苔の手伝い。
すずは鉛筆を落としたらしくお母さんに鉛筆代をお願いするがヨウイチが「落書きせにゃ済むだけじゃ」と叱られる。
母はすずに「水原のテツくんちゃんと学校来てるか?」と心配して聞いた。

学校。
すずは残った小さな鉛筆を削って、削りカスを机の近くにある床板の「節穴」に捨てる。
と、駒?消しゴム?みたいなものが飛んできて水原テツが探す。
すずは「母が何かお手伝いしましょうか」と気にかけていることを水原に伝えるが、水原は「知らん!」とすずの持ってる鉛筆を「代用に使う」と取り上げる。
どうも男子で手作り野球ボードゲーム的な遊びをしてたようだ。
が、すずが「返せ」と喚くし、みんなドン引きなんでポイッと鉛筆を投げ返す。
と、鉛筆は「節穴」にホールインワン。一昨日も「節穴」に鉛筆を落としたらしく泣き出すすず。ブチ切れた水原はすずのおさげを引っ張り上げ「コレに墨付けて書け!」と虐める。
これには男子達も止めに入る。
すずは「水原を見たら全速力で逃げろ」という女子の掟を忘れとったと反省。
とりあえずスミと筆でノートに書き写す。

図画の時間。
提出した人から下校。
すずは上手だから先生に褒められ、照れる。
「さすがだ!午前中寝とっただけの事はあるら!」と付け加えられ、照れるしかない。

帰宅。
すずは海苔のお手伝いをし、松林の丘へ「こくば(松の枯れ葉)」を拾いに出かけた際に、図画の絵を放置してぼーっと海を眺めてる水原を見つけてしまい焦る。
が、声をかける。
水原の兄は転覆事故で亡くなり、両親は海苔をツマミに飲んだくれてるらしい。
海が嫌で描きたくないと水原は兄の鉛筆をすずにやり「描きたきゃお前が描け」と投げやり。
すずは水原の代わりに絵を描き、水原の言う「ウサギが跳ねる(海が荒れてて白波が立つ状態)」を「白ウサギ」にして完成させた。
水原は代わりにカゴいっぱいに「こくば」を集め、すずに渡し(一輪のツバキ)「絵が完成してしもたから帰らないけん。こんな絵を書いたら海を嫌いになれんじゃろが」とぶつくさ帰って行く。


15年3月。
卒業。
戦争は激しさを増していく。


16年12月。
すずは街で海苔売り。


18年4月。
仕事の合間に鬼いちゃん従軍記という漫画を書くすず。水原からもらった鉛筆は小さくなっていた。


18年12月。
おばあちゃん家にてお手伝い(実家は3年前の埋め立てで廃業)。
海苔の収穫、海苔作りも板に付いてきたすず。
と、すずを嫁に貰いたいと呉から青年がやってきたとの知らせが届き、戸惑いながらも実家へ。
と、水兵になった水原とバッタリ。すずは相手が水原だと思い緊張するが、水原は兄の7回忌に帰って来ただけだった。すずはスミの方が美人だしそっちの間違いじゃと話すが、水原は「そうでもないと思う」とポツリ。

実家。
すずはちょっと家の中を覗き様子見。何故かキャラメルの風味が口の中に。
そして松林の丘で「嫌かも分からん人を断れないし」と悩んでいた(寒いのでおばあちゃんから貰ったピンクのツバキ柄の晴れ着を頭から被って)。
と、青年とその父親らしき2人が道に迷ったと現れたのですずは電停まで送り届ける。
父親は「親切な水兵に道を教えてもらったが迷った」と話し、すずは「彼は珍奇でして」とニヤリ。

後日。
父親から「山の中にいた珍奇な女性に電停まで世話してもらい無事に帰れました」と手紙が届き、鼻で笑うすず。


19年2月。
すずは流されるままに呉の北條家に嫁ぐ。家は山の麓にあり、街と湾が一望。
夫シュウサクの母は足が悪く家事が困難ゆえすずが引き受ける。
シュウサクは幼き頃にすずと会い一目惚れだった。と。
が、すずは全く覚えていない。
とりあえず初夜。

事後。
眠れぬすずは天井の板目を指でなぞる。

早朝。
家事をこなすすず。
兄への手紙を書く。
配給当番も何とかこなす。
が、ドジは相変わらず。

そんな中。
シュウサクの姉黒村ケイコ(意地悪)と娘ハルミが帰宅。
すずは家事の合間に手作りモンペを制作。
と、気づいたら配給の時間。ケイコが行くと言い、夕食の準備もテキパキこなす。
仕事を取られたすずは余った生地でハルミのバッグを作る。

夕食。
ケイコは母の面倒やなんやとすずに迷惑をかけ過ぎるからと「広島に帰り」と促す。これからは自分がやるからと。
義父も賛成。

すず実家。
すずは「呉にお嫁に行った夢」を見てたと夢見心地。ほっぺをつねられ現実に戻る。
すず曰く、みんなすずに「2、3日ゆっくり里帰り」してきなさいと笑顔で送り出したようだ。
すずを追い出そうとしていたケイコは思い通りに行かずイラつく。

久しぶりに姉妹でお風呂。
スミはすずにハゲが出来ていると教える。

翌朝。
久しぶりに街で絵を描くすず。
最後の思い出を描くのに夢中になり過ぎて終電を逃し、実家に帰る。

翌朝。
北條家へ帰宅。


19年4月。
ケイコは居座り続ける。
すずは仕事がやりにくい。居場所がない。元気がない。
帰宅したシュウサクはすずを元気づけようとする。
すずは戦艦大和の帰還を見て興奮するもシュウサクに「気にし過ぎはハゲに悪いぞ」と言われる。ハルミにもハゲ心配をさせる。

そんな中。
ケイコが配給でもらってきた小松菜の種。
泥臭いのは得意じゃろと種まきをやらされるすず。
興味のあるハルミは盆栽、水路の窪み、屋根の樋に種を撒く(すずも一緒に)。
と、丘の畑から見える軍艦の名を言い出すハルミ。
と、ケイコは「お家へ帰ろう」と言い、翌朝嫁ぎ先へと帰って行く。


19年5月。
配給が減る。
すずは野草等を使ったり、野菜の皮、梅干しの種なども捨てずにアイデア料理で毎日の食事を充実させる(が、たまに失敗)。

そんな中。
呉でも建物疎開が始まる。
と、家が取り壊しになったとケイコがまた帰ってくる(下関に引っ越すと言われ離婚)。


19年7月。
近所の人達と庭の山手に防空壕を掘る。
ハルミは段々畑から港を眺めている。
港には大和と武蔵。ハルミは戦艦に詳しい。シュウサクに教わったそうな。
教えてくれたお礼にとすずは今見えてる積乱雲を「鉄床雲。雨が降ります」と説明。
と、夕立。
防空壕でいい感じになりシュウサクとすずはチュウ(入口で)。義父義母がいたのも気づかずチュウ。「仲良しはいい事だ」と義父と義母。が、ケイコは幸せな2人を見て泣き出す。

ケイコは黒村時計店の若旦那と結婚したが両親と合わなかった(ケイコの性格が原因)。旦那が亡くなってから店の所有で揉めてたが建物疎開。長男ヒサオは黒村の跡取りとして下関へ。精神的に病んだようだ。
色んな事があったんだと初めて知ったすず(ケイコの行動や嫌がらせにも理由はあった)は段々畑から港の大和の絵を描く。
と、見回りしていた憲兵に見つかり「スパイ」だと疑われ、懇々と厳重注意を受ける。

シュウサク帰宅。
とんでもない事になったと落ち込むすず。
が、義母もケイコもシュウサクも「すずをスパイだと睨む憲兵」がとんちんかん過ぎて笑いこらえるのに必死だったと大爆笑。
義父もその話を聞いて大爆笑。シュウサク家が笑顔になるも何か腑に落ちないすず。


19年8月
配給に並ぶすず。
砂糖も配給停止に。
6月の空襲騒ぎで不安があったすずだったが今は遠い国の出来事な感覚になっていた。
ハルミがアリの行列を見てたのですずも一緒に後を追う。
と、キッチンの貴重な砂糖壺に群がっていた。
2人は水瓶に浮かべておけばアリが寄ってこないと考え桶の中に壺を置き、水瓶に浮かべたが、沈んでしまい落ち込む。
義母は怒ることはなくすずにヘソクリを渡し、闇市に砂糖を買いに行かせる。

闇市。
物資はないはずなのにココはもので溢れており、客も沢山。
すずは砂糖が配給の50倍以上だと聞き、目眩(ヘソクリと今月の生活費合わせても25円)。
が、「どちらにしようかな」で買って帰ることに。
コレからプレミア価格で日用品を買わなきゃならなくなる事を不安に思い、考え事をしながら歩いていたすずは見知らぬ街(歓楽街)まで来てしまっていた。
若いお姉さんに道を尋ねて回ってもみんなちんぷんかんぷんな説明(花がふわふわ飛んでる。いい匂いの表現らしい。よそ者が多くて土地勘なし)。
途方に暮れるすずは道路にスイカとキャラメルの絵を描く(現実逃避)。
と、水撒きしてた美人お姉さんが帰り道を教えてくれた。美人お姉さんはすずの言葉使いで同じ「広島の南の海の方」出身だと当てる。
幼少期は貧乏で「スイカの食べかすばかり食べてた。1回だけ親切してもろて赤い実を食べた」と思い出を語る。
すずは美人お姉さんのリクエストに答え、紙に色んな食べ物の絵を描く。
が、アイスクリームについてる「ウエハー」を初めて聞いたすず。
若いお姉さんは「キッチャテン行ったことないの?」とびっくり。
と、仕事が忙しくなって来たようで美人お姉さんは店に戻って行く。
すずは「完成させてまた持ってくる」と約束するが「こんなとこへは来るもんじゃない」と悲しそうに呟いた。

帰宅したすず。
ケイコに美人お姉さんが言ってた「ウエハー」について教えてもらう。甘いもんの話をしたからと「飲んだ水も甘くなった」と笑うケイコ。それはすずがやらかした「砂糖水」だった。


19年9月
ご近所さんからすずにTELの知らせ。
ノートを持って出かけようとするすずに「それなりの身なりで行きなさい!恥をかくのは身内!」とコンコンと叱られる。
すずは慣れない化粧。顔真っ白で街へ。

呉鎮守府。
出てきたシュウサクに頼まれてたノート(何故か裏表紙が4分の1程無い)を渡す。
が、厚化粧過ぎてすずだと気づくのに少し時間がかかる。
実はシュウサクは急ぎでもないノートをすずに持って来させデートに行く計画だったのだ。
すずは照れてキュンキュン。

街。
軍艦が帰って来たからか街は水兵で溢れかえっていたので映画は諦める。
すずはこの中に水原がいるかもと考え「何か恥ずかしい」とシュウサクに話す。
今、旧友に会うと「夢から覚めた」ような感覚になるのかな?とすずは考える。
でも今は今で満足してるから覚めなくていい。と。
シュウサクはすずを選んだことを「最良の選択」だと話す。
が、最近痩せたようだと心配。すずも最近食欲がないと答え「はっ」とする。
シュウサクも察する。

翌朝。
朝ごはん。
ケイコは呆れた的に「2人分」のご飯をすずに出す。
ちょっと申し訳なさげなすず。

昼。
すずは産婦人科の帰りに美人お姉さんを訪ね「食べ物の絵」を渡す。
が、アイスクリームとウエハーがよくわからないので何となく想像で描いていた。
しかも「あいすくりいむ」と書いていたためカタカナしか読み書きできない美人お姉さんには伝わらない。尋常(小学校)に半年しか通ってないらしい。身元表はお客さんが書いてくれたようで肌身離さず持っている。
彼女の名は白木リン。二葉館(遊郭)の従業員(遊女)。すずも道に自分の名を書き自己紹介。リンはもらった絵を身元表と一緒に大切にしまう。
すずは産婦人科の結果(ストレス、栄養不足で生理不順)を残念そうに話す。
リンは実母がお産の度に歯が抜けて最後には死んだから「お産はそんな大事なことではない」んじゃ?と疑問を持っていたが、すずは「出来がいい跡取り残すのは嫁の義務」だと語り、もし「それ」が出来なかった場合は実家に返され、挺身隊に入れられると考える。
リンは「義務が果たせないこと」がそんなに恐ろしいことなのか?と更に疑問を持つが「でも子供がいれば支えになるし、女の子は高く売れるし」と何か感心する。
悩んでるのが馬鹿らしくなってきたすず。
が、リンは「売られた子でもそれなりに生きてる。この世界に居場所がないなんてことはない」と笑顔で話す。

夜。
すずはケイコにご飯を上澄みだけのお粥(茶碗半分)に減らされる。


秋。
夏物片付け。
と、すずは屋根裏物置でピンクの茶碗を発見。ケイコ、義母、小林の叔母に聞いてもわからない。
小林の叔母は「すずは良い嫁だ」と褒める。
が、「シュウサクが結婚前に別の女に入れ込んでいた」ことをポロリ(直接的には言ってないがケイコは「ヤバい!余計な事言うな!」的な顔)。
が、すずは照れてるだけ。ケイコと叔父は胸を撫で下ろす。


19年10月。
庭の柿。秋の実りを収穫。
すずは回覧板で「決戦に向け準備せよ」という知らせを受ける。

ある日。
庭の竹を切っていたすず(竹槍作り)は突然何か考え事。点と点が線になった的にハッとし、シュウサクの書斎へ。
そして机の中のノートを確認。裏表紙の切り取られた「その大きさ」がリンの持ってた「身元表」とピッタリだと気づく。
ピンク茶碗はシュウサクが「嫁に来る人のために買ったもの。すずさん使ってくれ」と話していた。

竹槍訓練。
すずは頭に赤トンボが止まる程ぼーっとしている。そして「夢でないことはわかった」と結論づける。


19年11月。
が、「日常」は待ってくれない。
シュウサクにちょっとよそよそしくなってしまうすず。

その頃。
夕飯の小林叔父と叔母。
叔父はシュウサク夫婦は本当に上手くやっているのか心配。
シュウサクは上司に初めて女郎屋に連れて行かれリンと会い、同情。救い出すために叔父から大金を借りていたようだ。叔母がリンを諦めさせるために思いついたのが「すずとの結婚」だった。
結果仲良くやってればそれでいいと叔母。

そんな中。
シュウサクとすずはSEX(開戦間地)。
が、すずはそんな気になれない。
すずは「代用品の事を考え過ぎて疲れた」と嫌味。


19年12月。
すずは井戸でバッタリ会った旧友水原(軍艦青葉乗組。入湯上陸という名の自由時間が出来たためすずに会いに来た)を家に招き、家族に紹介。
水原はすずが一生懸命家事をしてる姿を見てヘラヘラ笑う。
自分には見せたことない一面。「幼なじみ」な2人のやり取りにシュウサクは嫉妬。
水原を母屋に泊める訳にはいかないと納屋へ追い出す。
が、「もう会えないかもしれないから、思う存分話をしてくればいい」とすずに「あんか」を持たせ納屋へ行かせる(母屋には鍵をかける)。

母屋。
2人は布団に入り、あんかで足をあたためる。すずは水原のお土産のサギの羽で羽根ペンを作り、サギの絵を描く。
が、久しぶりに描くので思うように描けないすず。水原は「白ウサギの絵」の思い出を話しながらすずを抱き寄せ、キスを迫る。
すずは水原と「こうなる」のを待ってた気がする。が、シュウサクに腹がって仕方ないと悔しがる。
水原はそこまでもシュウサクが好きなのかと気づき、すずは謝る。安心した水原は夜中の内にすずに見送られ出て行った。
結局すずは少女時代から水原には「肝心なことを言えない癖」がついてることにイラつきながらも、サギの絵の横に「羽ありがとう。立派になって呉てありがとう。死なずに来て呉て嬉しかった」と言葉を添えた。


20年2月。
すずの兄ヨウイチ戦死。戦死兵合同葬儀に出席した浦野家とすずとシュウサク。
骨壷の中身は遺骨かと思いきや「石ころ1つ」。家族はヨウイチが死んだことに疑問を持つ。

帰宅途中の汽車車内。
「呆気なく人は死ぬ」んだと実感したすずは「生きてる間に伝えたいことは伝えなきゃ」と考え、シュウサクに「水原のこと」について礼を言ったが「夫婦はそんなもんじゃないでしょ」と詰め寄る。シュウサクは「すずを無理やり嫁にした」後ろめたさと自分には見せない「水原への起こり顔」に嫌味。すずは「今怒っている」と怒る。2人は大喧嘩しながら家路につく。


3日後。
すずは二葉館にリンを訪ねるが「そんな娘はおらん!」と追い返される。
と、窓から風邪ひき遊女がすずに声をかける。
リンは今、二階で士官とおネンネ中らしい。
すずは風邪遊女を元気づけるため積もった雪の上に「南国の絵」を描いた。
喜ぶ風邪遊女(そこまで深い仲ではない水兵と川に飛び込んだらしい)に茶碗を託くすすず。
たくましく生きるリンに何一つ叶わないと落ち込む。


20年3月19日。
畑にいるすずとハルミ。
と、突然の空襲。
すずは空に花火が打ち上がっているかのように思え「絵を描いてる気分」になる。
と、タイミングよく帰って来た義父がすずとハルミを伏せさせ覆い被さり盾になる。


20年3月29日。
午前4時50分。警報発令。
すずはかまどの火を訓練通り消火し、防空壕へ。

朝。
警報解除。
そのせいでご飯は生煮え。


20年4月3日。
毎晩空襲警報が鳴り響く中、二河公園には沢山の花見客。
と、リンがすずを呼び止める。
お得意様と花見に来ているようだ。
すずは家族を紹介しようとしたがシュウサクと会ってイチャられてもとかアレコレ考え事。リンに「話聞いてる?」とツッコまれハッと我にかえる。
リンは着物スタイルで色っペーが中に「細ハカマ」を履いてるからと桜の木に登り出す。
すずも誘われ登る。

リンは茶碗の礼を言う。すずは夫北條シュウサクが買った茶碗だと伝える。
が、無視。
と、「ね?知らん顔されたら嫌でしょ?」と笑う。すずは話題を変え「風邪遊女」の体調を気にかける。
が、彼女(テル)は肺炎で死んだと聞かされた。テルからすずの話を聞いていたリンはテルの形見である「口紅」をもらって欲しいと渡される。
リンは「最後は1人。死んだら持ってた秘密も消えてなかったのと同じになる。それはそれで贅沢なことなのかも。自分専用のお茶碗と同じくらいに」と話す。
戻って行くリンはシュウサクとバッタリ。
が、軽く挨拶を交わすだけだった。
その姿を木の上から見ていたすず。


20年4月5日23時45分。
空襲警報。


翌朝。
20年4月6日。
寝不足すず。
空にB29(現実)を初めて見る。
その日、大和撃沈。


20年5月5日。
空襲警報解除。
せっかく干した洗濯物がすすだらけに。

夜。
シュウサクは15日付で法務の一等兵曹に。
3か月は戻れない。
義父は戦闘機のエンジン製作で工場に泊まり込み勤務が続く。
女だけになる北條家に不安を持つシュウサクとすず。すずはシュウサクをココで待つと伝える。


5月15日。
すずはテルの口紅で化粧しシュウサクを送り出す。


20年6月21日。
義父は工場で空襲を受け、入院していたと知らせを受けケイコが見舞い。時計の修理を頼まれたから下関の黒村を訪ねると決める。


20年6月22日。
ケイコとハルミを見送るためついて行くすず。が、切符売り場はスゴい行列。ケイコは並んでる間にハルミを連れての見舞いをすずに頼む。

病院。
義父は長い間意識がなかったようだ。
戦況から義父はハルミを下関に疎開させる案(呉よりは安全)をケイコにしたようだ。

帰り道。
空襲警報。
すずとハルミは近くの防空壕へ入れてもらう。
すぐ近くにも爆弾がガンガン落下する。

空襲警報解除。
すずとハルミは駅へ向かう。
途中爆弾に破壊された擁壁から港が見えたがまだモクモクと黒煙が上がっており状況はよくわからない。
と、遠くから消火に向かう消防士が「不発弾(時限爆弾)に注意しろ!はよ逃げろ!」とすずに注意喚起。すずは礼を言って手を振る。
と、最近すずは「時限爆弾」について講習を受けたことを思い出し、目の前の「漏斗孔」が時限爆弾かも?と気づき、ハルミの手を引き逃げる。が、爆発に巻き込まれる。

包帯だらけで家の布団で目を覚ましたすず。
「人殺し!」と泣き叫ぶケイコ。謝りながら嗚咽するすず。すずも右手を失う(ハルミの手を引っ張った手)。
隣には退院して自宅療養中の義父。


7月1日。
回復した義父は工場へ出勤。

夜。
空襲。
防空壕へ。
町に焼夷弾が降り注ぐ。
北條家の畑にもたくさん落下、その1つが母屋にも落ち、着火。
すずはその炎をぼーっと眺め続ける。
が、突如発狂し、炎に布団を被せ、バケツの水をかけ、転げ回って消火。

翌朝。
町から山へ避難して来た人々の会話の中ですずは「遊郭丸焼け」と耳にする。
と、シュウサクが帰宅。すずは「リンさんを探して」と伝え、気を失う。

「無事で良かった」「母屋が火事にならなくて良かった」「すずの怪我の回復が早くて良かった」
もう絵が描けない体になってしまったすずには何が「良かった」のか全く理解についていけない。
と、スミが見舞いに訪れる。
少し元気を取り戻すすずはスミを途中まで見送る。スミはすずに広島に帰ってきたら?と提案し帰っていった(恋人の陸軍将校と待ち合わせ)。


7月28日7時。
空襲警報。
防空壕へ避難しようとしたすず(大切なマイバッグ持参)の目の前に1匹のサギが舞い降りる。
が、「ココは危険!山を越えて広島へ逃げろ!」とサギを追っ払うように後を追いかける。サギに自分の姿を重ねる様に。
と、戦闘機がすず目掛け機関銃を乱射。たまたま帰宅途中のシュウサクがすずに飛びついて水路に身を隠す。が、マイバッグの中の「サギの羽根ペン」「テルの口紅」は粉々に破壊されてしまう。
すずはシュウサクに「広島に帰る」と伝える。


その9日後。
8月6日。
すずは病院へ行ってから広島へ帰る予定。
ケイコはハルミの死をすずのせいにしたことを謝り、「ココでもいいし、自分の居場所を自分で決めたらいい」とアドバイス。
と、空が一瞬光る。
雷か?と驚くケイコ。
「やっぱりココにいたい」と泣くすず。
と、地震?
数秒で収まるもラジオ放送は聞こえない。
広島方面に「鉄床雲の様な大きな爆煙」が立ち上がるのを見て不安になるすず。

配給所へ向かうすず。
近所の人が「広島の回覧板が落ちてた」とびっくり話をしていた。
まだキノコ雲は大きく空に残っている。

隣保館。
ご近所の女性達は先日の空襲時に救援してくれた広島へ草履を作る。
すずはそれを広島へ運ぶと聞いて「行きたい」とお願いするが「怪我人は行けない」と説明を受ける。
が、すずはハサミで三つ編みに束ねていた自分の髪を切り「コレで結う手間も省けるし、迷惑かけないから」とお願いするが「ダメ」と釘を刺される。
諦めて帰るすず、ケイコ、叔母。
と、隣保館の脇でハエが集ってる座り込んでる男性。

夜。
帰ってきたシュウサクから「広島に新型爆弾が落とされた」と聞くすず。不安がつのる。
シュウサクは鎮守府から救援が出てると安心させる。

翌朝。
庭のユーカリの木に広島から飛んできたと思われる障子を見つけるすず。

配給所。
昨日座り込んで死んでいた広島から逃げてきた男性の話をしてるご近所さん達。
すずには心配が増えるだけだし、気の毒だから黙っておこう。と。
と、「蚊やり」用のユーカリの葉を持ってきたすず。ご近所さんはすずを励ます。


8月9日(長崎に原爆が落とされた日)。
すずはスミや同級生の安否を心配しつつも呉の人達みたいに強く、優しく、しぶとくなりたいと思いながらユーカリの木の障子を下ろそうとする。
と、制空権を握った米軍爆撃機から「都市から退避せよ!」と書かれた「空襲予告」のビラ(伝単)がまかれる。
すずは「うるさい!そんな暴力に屈さない!」と強く思う。

夜。
すずは改めてシュウサクに「ココに住まわせて欲しい」とお願いする。
「心配かけやがってアホアホアホ」とシュウサクは竹刀を素振り。すずは謝りながら丸めた紙をシュウサクに向かって投げる。シュウサクは1つも竹刀で打ち返せない自分が情けない。
と、シュウサクはそれが伝単だと気づき、憲兵に報告しなくちゃとすずに説明するが「どうせ燃やすだけ。落とし紙にして利用した方がいい」と普通の生活を持続させて行くのが自分達の戦いだとすずは自分の考えを貫く。


8月15日。
玉音放送。
終わった終わったとラジオを切るサバサバケイコ。
新型爆弾を広島と長崎に落とされ、ソビエト参戦。負けても仕方ないかと義母、ご近所さん。
が、すずは納得行かずにブチ切れる。
「最後の一人まで戦うんじゃなかったのか!まだ左手も両足も残ってるのに!」と悔しくて悔しくて泣きながら井戸水を汲みに行く。
サバサバしてたケイコだったがハルミを亡くした意味がわからなくなり陰で泣き崩れるのに気づくすず。

すずは段々畑で佇む。
今までの事が全て飛び去って行く(無駄になった)。
集落に掲げられた太極旗。
外国(朝鮮、台湾)からきた米、大豆で生かされていた身体。ゆえに暴力に屈さなきゃならないのか?
悔しくて悔しくて泣き崩れる。
ぼーっとしたままの自分で死にたかった。と。
が、荒れた段々畑にはカボチャの花?が咲いていたことに気づく。

義母は「最後の晩餐に」と貯めていた白米を今夜は少し混ぜ物無しに炊こうとすずに伝える。

すずとケイコは米を炊く。
広島から飛んできた障子を燃料にして。

その頃。
工場ではエンジンの図面等を燃やす。

夜。
晩飯。
白米だけの食事を囲む。シュウサクは戦後処理に忙しくまだ帰宅してない。
義父は「せっかくの白飯が見えん」と電灯のカバーを外す。灯火管制も無い町に光が戻って行く。


9月17日。
終戦から3つ目の台風。
「毎日」は続く。
戦時中の焼夷弾の跡から雨漏り。
強風の中、直そうと屋根に登りかけるすずに変わり、シュウサクが屋根へ。
「頼りになる」と言ったすずだったが、シュウサクはもう1つ大きな穴を開けてしまい、雨漏りはダイナミックに。

この嵐の中、郵便配達が来れないためケイコが手紙を取りに。
が、びしょ濡れで読めない。
と、義父が「42年奉職した海軍工廠を解雇になってきたぞ!」と勝ち誇って帰って来た。
と、崖崩れで玄関が埋まる。
「冴えんのう」と大笑いの一家。けど災害で亡くなる人もいるから不謹慎かとも考えるシュウサク。戦争でなくても人は亡くなるとすず。
手紙の送り主はスミだった。


10月6日。
シュウサクを送るすず。
いよいよ連合軍(アメリカ)が海軍解体のため上陸が始まる。シュウサクらは大竹へ移る。秩序を維持する使命があると説明。
と、シュウサクは遊郭跡地へ行っこいとすずに指示。二葉館の瓦礫の中に「ピンク茶碗の欠片」を見つける。
すずはあの時見た座敷童子はリンでは?と思っていた。
「ごめん。リンさんのことを秘密じゃなくしてしまった。でもコレも「贅沢」だと思う」とリンに語りかけた。


20年11月。
元気のないご近所さん。
すずはケイコと大行列の配給所へ。
子供達は占領軍兵士にお菓子をもらう。
配給は占領軍の残飯雑炊。紙くずが入っていたのにめっちゃ美味くて感動する2人。
家で食べる飯は味なし。
塩も醤油もずっと配給されてない。米の配給も延期ガチ。

すずは米兵に道を教えたらチョコをくれたらしく、ハルミの死だだ場所でお供え。ご近所さんは着物を大量に売って食べ物と交換。

帰路。
ご近所さんは隣保館死体が自分の息子だったらしい。自分の息子と気づけなかったと話す。
と、すずは港に沈んでる青葉を眺めてぼーっとしてる水原とバッタリ。が、そのままスルーした。すずはこれからは笑顔でハルミを思い出すと話し、ご近所さんは「そう泣いてるのは持ったいない!塩分が!‌」と。

21年1月。
すずは草津(広島西部)の森田家(おばあちゃん宅。被害少)へ。
母は祭りの買い出しで街へ行って原爆に巻き込まれる。すぐに父親とスミは探しに行くが行方不明。
父親は10月に倒れて直ぐに死去。
スミも原爆症でとこに伏せていた。
すずはスミを元気づける。

実家。
すずは空き家の実家へ。
と、物音。
もしかして母?と思いきや戦争孤児の兄妹が宿にしていたのだった。「誰もいなかったからごめんなさい!」と謝る兄。
すずは深いため息をつき、実家を後にする。

広島。
色んな人に声をかけられるすず。
誰もが行方不明者を探し、さまよっている。
と、シュウサク。海軍が解体され、御役御免となったようだ。
シュウサクはすずと初めて出会った「橋の上」で「あの頃には戻れんし、変わり続けて行く。でもすずさんの事は直ぐにわかる」と話し、すずは「この世界の片隅に私を見つけてくれてありがとう。ずっとそばにいてください」と答えた。
2人の後ろを「籠を担いだバケモノ大オッサン」が通り過ぎて行く。
と、2人はオッサンに気づく。
オッサンは振り返らず2人に手を振り、籠の中からアニメ調のワニ?が出てきて2人に手を振る。


女の子は広島で被爆。
右腕を失った母親は力尽きて倒れる。
母親の死を受け入れた女の子は母親の亡骸から離れ、1人何とか生き延びる。
そしてシュウサクとすずに出会う。
懐く女の子を2人は呉に連れ帰る。

北條家。
みんな優しく女の子を受け入れる。


(スタッフロール)
女の子はハルミのお下がりを着させてもらう。
すずがおばあちゃんから教えてもらったように裁縫を教える。

少年と左足のないジジイ(2人とも誰かよく分からん)

女の子が縫ったピンクに白ドットワンピースはケイコにプレゼント。余った生地で自分にはTシャツ。すずには黄緑ワンピースの襟やポケットに使用。みんなお揃い柄。

家族揃って青空を見上げる。




と思いきや。
(クラウドファンディング支援者ロール)
口紅で描かれるリンの生い立ち。
貧乏一家。長女リンは幼き弟妹3人の面倒を見ながら家事。

そんな中。
アル中父親はリンを金持ちに売る。
リンは女中として働くが主のバカ息子の執拗なイジメにブチ切れて、ゲンコツお見舞いしてトンズラ。

放浪したリンはどこかの家の屋根裏に住み着く。
幸せそうな家族の姿を天井裏から覗きながら食べ残された「スイカの皮」をこっそり頂く。
その姿をすずに見られる。

リンに気づいてたすずのおばあちゃんは出て行くリンに新しい浴衣と食べ物を持たせる。
リンはこっそり汽車に乗り、他所の土地へ。

呉。
博覧会場前でリンは年老いた女性に声をかけられ、喫茶店でアイスクリーム(ウエハースつき)をご馳走になり、遊郭へと連れて行かれる。
雑用として働きながら成長したリンは女郎に。

そして。
リンはシュウサクと出会い、その後すずと出会う。

すずの失った右手がリンの隣に寄り添う自分の姿を描く。






というお話。
前作で表現できていなかった部分を補完し、「完全版」としてカスタマイズ(原作により忠実になったらしい)。
コレを観たらいかに前作が未完成であったかを理解できる。

こちらはリンの「片隅」を深堀することによりヒューマンドラマの部分がより丁寧に表現されている。

主人公すずは精神的疾患まではいってないにしろ激しい妄想癖がある(生きる術)。
バケモノエピソードは「妄想」要素大だったはずだが終盤で「現実」に入り込んできた。
リンの存在ももの凄く幻想的なイメージがある。
すずの「片隅」で起きる出来事は全て「妄想」だとも考える事は可能。
すずにとって心の支えや都合のいいこと(絵を描く、空想)は「妄想」で、都合悪いこと(イジメ、右手の喪失、ハルミの死、戦争等)は「現実」と分けることも可能。
どちらにも属さず、どちらをも忘れる事が可能なことが「日常」。ただそれをこなしていれば、こなしていくことができれば「平和」だとも言える。
だからこそ右手を失ったすず(現実しか見れない)は「平和」を求めるしかなくなった。と。

すずにはもう1つ「受動的」という悪い癖がある。
これも幼少期から培った「生きる術」であるが水原納屋エピソードがあってから主張を前に出すようになり、右手を失ってからそれが時にスパーキング(現実逃避できない結果)。

「左手で描く歪んだ世界」は嫌だと自暴自棄になってはいたが何故「左手で上手く描けるようになろう」としなかったのかが謎。
逆にラストのリンエピソードですずが左手で自分を描いてたらエグかったかな。
右手じゃ妄想癖が強い。あれは現実(リアル)でなきゃ。その対比が「左手」だから。


PS
今回終盤の「イデオロギーぶち込み」はカスタマイズされてない。
結局「すずは終戦以前から太極旗の存在を知っていながら終戦になって初めて痛感する」という矛盾は監督の解釈で丸めなきゃ。
逃げてちゃすずと同じ。
アトミ

アトミ