イチロヲ

瀧の白糸のイチロヲのレビュー・感想・評価

瀧の白糸(1933年製作の映画)
4.5
旅一座の花形芸人(入江たか子)が、道中で知り合った青年の立身出世を支援するうちに、立場の逆転現象に苛まれてしまう。泉鏡花・著「義血侠血」から着想を得ている、サイレント期のメロドラマ。

昔のVHS版にはマツダ映画社長・松田春翠の活弁が収録されていたが、現行のDVD版には松田門下生・澤登翠の活弁が同時収録されている。活弁の内容は大同小異であり、公開当時の雰囲気を純粋に楽しむことが可能。

本編内容では、旅一座の種々相がメインに描かれており、ネガティブなイベントが釣瓶打ちとなって発生。心が浮き立っていたヒロインの急転直下を通しながら、「見返りを求めない精神」こそが真実の愛、真実の功徳であることを暗示させていく。

ヒロインを徹底的に追い込んでいき、「退廃と敗北の美学」へと着地させるという、溝口健二の作家性が大爆発している作品。田中絹代の時代しか知らずに鑑賞すると、「入江たか子をこういうふうに撮っていたのか!」という新鮮味を得ることができる。
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