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男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日のながののレビュー・感想・評価

4.2
男はつらいよ 第40作(残り10作)
マドンナ 三田佳子(小諸のお婆ちゃんの担当医・真知子)

マドンナは三田佳子。その姪役の三田寛子、今のバラエティに出てるイメージと変わらんくて可愛い。尾美としのりも若くて、でも安心感が半端ない。
小諸のお婆ちゃんを演じた鈴木光枝も愛すべきキャラクターだった。北林谷栄・初井言榮と並んで、新劇界の三大婆さん女優らしい。

『寅さんが「この味いいね」と言ったから 師走六日はサラダ記念日』

今回の男はつらいよは、俵万智の「サラダ記念日」が原作。三田寛子演じる、早稲田大学国文学科生の由紀が読む短歌が、随所に映し出される。シリーズでは珍しい演出。どの歌も好きなんだけれども、「サラダ記念日」読も。

演出といえば、寅さんが、小諸のお婆ちゃんの亡夫について語るとき、死に際の溜息に合わせて、庭で落ち葉が一枚ひらりと舞うのが素晴らしい。お婆ちゃんが長年暮らした家を去る時も、まるで見送るように落ち葉が舞う。これぞ映画の演出、「神は細部に宿る」の体現。

『愛ひとつ 受けとめかねて帰る道 長針短針重なる時刻』

寅さんがコンプレックスによって恋愛に踏み出せないの、そろそろ痛々しくなってきた。これまでに恋愛で大怪我しまくったせいで、もう女性に簡単に心すら開かなくなってきた。今回もマドンナの真知子との別れ際、横顔が切ない。満男もしっかり見ている。

『寅さんが早稲田の杜にあらわれて やさしくなった午後の教室』

寅さんが(実際に俵万智の母校の)早稲田大学に単身乗り込み、聴講生として講義に潜伏。教養もないし、頭は全く空っぽだけど、周りを和ませる能力だけは誰よりもある。退屈な教授の講義すら盛り上げてしまう。いつか夜間中学に乗り込んで、場を乗っ取ったとき以来かな。
感動したのが、ここで第20作のワットのガス爆発事件が登場したこと。とらや大爆発。過去作のエピソードが出てくると嬉しい。

タコ娘のあけみが消え、代わりに三平くんが新人従業員として入ってきた。ちなみに色々あったため、今作から「とらや」は静かに「くるまや」に改称。くるまや主人のおいちゃんの、寅さんに対する静かなる舌打ちは笑った。御前様がいよいよ縁側に板付きに。シリーズがクライマックスに近付いてきました…。
タコ社長が社屋に地上げ反対と掲げるのは、時代を写す山田洋次流。特に寅さんがひなびた温泉への憧れを語ると、お婆ちゃんに「いいな金持ちは」と言われるシーン。前作の交番のやりとり(警官から紹介された千円で泊まれる宿がクソボロかった件)に続いて、バブル真っ盛りの時代背景、時代の変遷を感じさせる。
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