ころん

ぐるりのこと。のころんのレビュー・感想・評価

ぐるりのこと。(2008年製作の映画)
3.8
とある夫婦の10年間とその周囲で起こったことについて。

きちんとしたかった翔子が様々な出来事がきっかけで疲弊して崩れていく。法廷画家の仕事しながら絵画教室の講師もして妻を支えるカナオ、結婚したての頃は頼りなさそうだったのに良い夫になっていくじゃん。でも無理してるとか頑張らなきゃって張り切ってる感じはなくて、どこまでもフラットで安心感があった。
みんなに嫌われてもいいじゃん、好きな人にたくさん好きになってもらった方がいいよ、みたいなセリフが印象に残ってる。
人と人は分かり合えないということを丁寧に書きつつも、寄り添えるという希望も感じる。支える時もあれば支えられる時もある、理想の夫婦像のひとつだと思った。

一方で、カナオが法廷画家の仕事をしているため90年代に実際にあった事件をモチーフにしたであろう事件の裁判シーンにも多くの時間が割かれている。裁判中もカナオは表情をあまり表に出すことはなく何を考えているのかわからない。でも亡くした娘のことや"普通"から外れてしまった被告人達、職場の同僚などを対等な視点で見ていたように感じる。言葉足らずで泣くこともなく飄々としているカナオを通して90年代をみた気持ちになった。カナオほど達観できてないけど。

余談
他人への無遠慮な発言や行動など、今改めてみるとキツいなーと思った。2024年、世の中は確実に変わっているんだね。
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