ころん

若武者のころんのレビュー・感想・評価

若武者(2024年製作の映画)
4.0
鋭いナイフのようなセリフの数々。
諸刃の剣のような思想。
若さゆえの無敵感と常につきまとう虚無感と諦念。
楽しんでね、この世を。この地獄を。

寡黙な渉はその身体の中に隠しきれないほどの思いを抱え込み、それでも職場の人とは適度に付き合いつつ働いている。家庭環境に問題がある。
刺激が欲しい、革命を起こそうと次々と第三者を巻き込みトラブルを起こす英治はアルバイト先では元気な居酒屋店員に擬態して世間に紛れ込む。ちゃっかり彼女持ち。
介護士として働く光則は一見まともそうに見えるが危なっかしい発言が多い。母親との関係は良好。

人間誰しもが持っている二面性、攻撃性をあえてわかりやすくみせているように感じた。世間様に中指を立てるような気概や良し。ずっとヒリヒリしてた、負の空気が漂っていた、気の休まる時間がない映画だった。
でも、画面の中に映り込む風景は優しそうなものばかりで。そのギャップを皮肉と感じるか刹那的な美しさを感じるか。

ラストの渉は誰に話しかけているのか。そして最後に映る日本刀。渉と父親の会話を思い出す。
武者とは世直しをしていた3人なのか。武者などどこにも居なかったのか。色んな見方ができそうで、挑戦的な作品だと思った。いつ死ぬからわからないからこそ考えることを放棄したくない、考えることを放棄するのは緩慢な死なのかもしれない。
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