勝沼悠

ファニーゲームの勝沼悠のレビュー・感想・評価

ファニーゲーム(1997年製作の映画)
5.0
 別荘で楽しく休暇を過ごすはずの親子三人が白シャツ白手袋の二人の若者に襲われる。彼らは凄惨なゲームに無理やり家族を巻き込んでいく。
 オーストリアの鬼才ミヒャエル・ハネケ作品。
 
 オープニングのクラシックから一転デスメタルになる音楽で只事じゃない予感。
 殺戮者の若者は自分達がいる世界が映画であることを知っていて、スクリーン(視聴者)に語りかけストーリーを巻き戻すことさえできるメタ映画な存在であるという重要なネタばれを知ってて視聴。この二人がメタな存在であるというのは少しずつ小出しにされ、じんわりそうなのかと少しずつ思わせる。分かってて見ると、彼らが中盤いなくなって急に純粋なストーリーに戻る感覚が逆に怖い。
 これはハリウッド的娯楽暴力映画への強力なアンチターゼなのだと思う。彼らが適当に話す動機が全く意味ないのも、子どもから殺されるのも、最後の大逆転の伏線のナイフがあっさり取り上げられるのも、映画はこうなるはずというものを全て裏切るという意思表示だ。
 徹底して暴力シーンを映さずこれだけ不快にさせるのはすごい。視聴者である自分に語りかけ、自分が傍観者であることを強く意識させられるからだろうか。映画を娯楽として楽しもうとしていることを省みれば、共犯者に仕立て上げられているとも言える。

 非常に緻密につくられた世界一不快な映画。でも映画を見ていく上では欠かせない一本かもしれない。 
勝沼悠

勝沼悠