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十二人の怒れる男のあのレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
3.6
 殺人の罪に問われた少年の評決について、12人の栽培員が一室で議論を交わす。法廷で提出された証拠や証言は少年にとって不利なものであったが、陪審員8番だけが無罪を主張し…

 ほぼ全編が一室だけで繰り広げられる会話劇。普通に撮れば全く変わらない画に飽きてくるはずだが、役者をできるだけウロウロさせてカメラに動きを出している。

 貧困層や移民への偏見、息子との確執といった個人的な事情を評決に持ち込むべきではなく、集団での意思決定時には、同調圧力に飲まれずにマイノリティの声に耳を傾けるべきだという、民主主義および裁判員制度のあるべき姿を説いた作品。

 陪審員8番の発言は屁理屈臭い揚げ足取りともとれるが、"疑わしきは罰せず"という推定無罪の原則に則った主張をする。陪審員9番の老人証人に対する見解や彼の歩く速度などは全く不確定で、それこそ偏見とも言えるかもしれないが、あくまで証言に疑問が生じる限りは有罪にするべきでないという考えだ。

 しかし同調圧力に飲まれないことの大切さを説くなら、最後に"やっぱり殺してたかもね…"みたいな捻りがほしかったかも。もちろん物語の要点が事実よりも議論自体にあことは承知だが。蛇足だろうか。
あ