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十二人の怒れる男のいのネタバレレビュー・内容・結末

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

暑い設定は、「議論を早く終わりにしたい」という自分本意の考えを持つ人間の炙り出しとして、また白熱する怒りの象徴的として機能する。

ほぼ陪審室だけで展開されるのに、議論パートと休憩パートの緩急もあって、ずっと釘付けだった。

最後の「お名前は?」で、お名前は…!?!?となった。あれだけ熱い意見を交わし合っていた彼らが、互いの名も知らずにいたことの驚き。

〜以下、各陪審員の印象〜

1番:陪審員長。この映画は議論と議論の間の他愛もない雑談にも本質が宿っている。フットボールのコーチを務める彼の「夕立は反撃の合図」という言葉は象徴的。

2番:話が分かるタイプ。気弱そうな態度とは裏腹に芯の通った人。

3番:最後まで有罪側に立ったキーパーソン。「あんな爺さんに何がわかる!」「殺してやる!」など次々墓穴を掘っていく姿や、息子への揺るがない愛情に突き動かされる姿は可愛らしさすらある。一方で、有罪を主張するうえで「一人だけでも権利がある」という彼の意見は大切。無罪側による数の圧力に屈する、という形にしなかった彼の功績は大きい。

4番:有罪側の中では最も筋の通った主張をしていた。納得のできる根拠を提示されれば意見を尊重してくれる、話のわかるタイプ。

5番:スラムで暮らした過去を持つ彼は、少年への偏見を早い段階で振り払おうとした。彼自身も偏見の眼差しを向けられてきていたことが察される。

6番:印象が薄れてるのでもう一回観たい。

7番:判決が与える影響を一番軽んじていた印象。自分の予定次第で立場を簡単に変える。

8番:本作の主人公。彼は最初から絶対的な無罪を主張したわけではなく、「疑問がある限りは有罪にできない」「議論がしたい」という立場だったのが良かった。無罪に意見がまとまりかけた際も、自分たちが間違っている可能性について指摘しつづけていて、とにかく誠実な人だと思った。

9番:最初に無罪側に転じたり、眼鏡の証拠を突き止めたり、なかなか重要な役割り。一方で、「誰からも意見を求められたことがない老人」「35歳に見せようとしていた女性」など、偏った見解を付して証言を検討していたのは気になった。

10番:心配になるくらい露骨に悪印象のキャラクターだったな。節々に少年に対する偏見を覗かせていたけど、とにかく最後の演説は名シーン。彼がどれだけ虚しい偏見の上に立って意見を述べていたか、ということが明らかになって孤立していく姿は、見るに堪えないほどだった。

11番:「この評決で私たちは何も得ない」「無罪を確信してから無罪に投票しろ」など、彼の意見はぜんぶ示唆的に響いた。

12番:時にはジョークで場を和ませてくれることもあったけど、こと評決に関しては行きつ戻りつの態度で、その軽薄さが明らかになっていった。かわいらしいけどね。
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