となりの

十二人の怒れる男のとなりののレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
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避けては通れないと思ってたけど、ふつうに面白かった。

癖の強いおじさんたちが、汗をかきながらケレン味のたる議論をし、矛盾の可能性をついていく……ほぼ「逆転裁判」だった。

とはいえ、デイビスが繰り返し話すように、真相は明らかではない。
証人が虚偽を述べている可能性があるように、陪審員たちが虚偽を述べている可能性もあるが、法廷を直接見ていない観客にはフェアな判断はできない。
ただ、それでも、さいごの陪審員三番をみなが見つめるように、観客もまたかれを眼差してしまう。
そうした説得力が生まれるのは、緊張感のある画であることや、休憩などの場面で提示される人間模様が伏線として回収されるなどの脚本の上手さによるものだろうか。

ともあれ、長回しが素晴らしく、とくに、「個人的な偏見を〜」の前後がすごい。
ゆっくりとカメラが動いて、机をまたいで、デイビスのバストショットになり、かれの真っ直ぐな目線はこちらを見据え、それがリバースショットで有罪側が映される。
デイビスにまなざされることで、われわれがさいごの疑念を抱いていることを見透かされているようではないか。

その意味で、この映画の問題は、デイビスが見たものを同じよう見せずに、デイビスと同じ観点に立たせることだと言えるだろう。
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