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PARIS-DAKAR 15000 栄光への挑戦
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『PARIS-DAKAR 15000 栄光への挑戦』に投稿された感想・評価

4.0
映画監督の原田眞人の訃報が入ったばかりだが、この映画、彼の監督作品としてほとんど名前が出てこない。原田の著書『砂塵のレーサーたち パリ・ダカール最前線』によれば、撮影直前に発覚した資金難で一時は撮影も公開も危ぶまれたというし、興行的には芳しくなかったという不遇に見舞われた映画だったからかもしれないが、個人的には大好きな彼のドキュメンタリー映画なのである。

パリを出発、アフリカの砂漠を走り抜けて大西洋に面したセネガルの首都ダカールにゴールする、パリダカの通称で知られる1万5000kmにおよぶ過酷な自動車ラリーの模様を、日本人チーム「ACP」のプレス車に乗って取材・撮影している。

音楽も手がけた宇崎竜童のナレーションは、淡々としながらも冷たさはない。監督の原田の本作へのスタンスと同じだと思うのだが、観る側にいやらしく擦り寄ることも、大袈裟に煽ることもせず、冷静で、少し突き放しつつ、芯の部分には被写体や映画への熱い思いが感じられるのだ。

競技中の事故も多く、なかには日本人ライダーの死、さらにラリー創始者ティエリー・サビーヌのヘリコプター墜落死という痛ましい出来事もあったが、御涙頂戴にならず、厳しくも清々しい眼差しがフィルムから伝わってくる。

本作の冒頭で、こんなフレーズが語られる。「なぜパリダカなのか。なぜ冒険なのか。なぜ山に登るのか。すべて同じ質問である。登山家ヒラリーの答えは、『そこに山があるから』だった。」

「なぜ山に登るのか。そんなことを聞くならそこに山があるから自分で登ってみろ。ヒラリーはそう言って、尻の重い質問者に冒険を促したのだと思う。」

「なぜパリダカなのか。そうたずねる代わりに、私はプレス車に乗って映画づくりの旅に出た。3人のカメラマンだけを、クルーとして連れて。」

荒涼とした道なき道を猛スピードで疾走し、競技者同士のみならず自然と七転八倒し、食うもの食わず寝る暇惜しんで疲労困憊になりながら、何十メートルもの砂丘めがけて突っ込んでいく、おおよそ合理的な説明のつかない行いをしている人間を被写体とするということへの尊敬と覚悟のようなものを感じる言葉だ。

映画監督をこう評するのはおかしいけど、自らの熱い「映画道」のようなものをしっかりと持っていた。そしてどこかジャーナリストのような冷静さ、批評眼もあった。内に異なる温度感を持った映画人だったように思う。
第8回パリ・ダカールラリーの原田真人監督によるドキュメント。
梅田東映パラスにて。
木
2.5
同時上映「ヒッチャー」