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バルタザールどこへ行くのFancyDressのレビュー・感想・評価

バルタザールどこへ行く(1964年製作の映画)
4.0
原題『Au Hasard Balthazar』

これは、多分、自宅のTVモニターで見たら良さが半減する作品だと思う。つまり、映画館の大スクリーンで見なければいけない映画である。

ブレッソンといえば、手の映画であるわけだが、本作は足の映画でもある。(主人公のロバの足、足、足の動きに注目して見ると実に面白い。)

本作の主人公は、人ではなく、ロバだ。ロバの目を通して人間の愚かさが露になる。

ロバの誕生から死までを描いているのだが、同時に、ロバと人間たちが対峙することにより、人間の七つの大罪(怠惰、傲慢、淫乱、憤怒、虚飾、憂鬱、大食)があぶり出されるわけ。

まあ、どうにも救いのない暗い寓話なのだが、画は、明るく美しい。この対比に驚く。そして、この画の美しさを存分に味わうには、やはり、大スクリーンで見なければ意味がないわけだ。

本作は、後に、ゴダールの『中国女』に主演し、ゴダールの元嫁でもあった、アンヌ・ヴィアゼムスキーのデビュー作でもある。

皆さんが言ってるような大傑作だとは思わないが、限りなく美しい映画であった。

「君の映画の中に人が魂と心情を感じるようでなければならぬ、が、と同時にそれは手仕事のようにして作られねばならぬ。」(ロベール・ブレッソン)
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