蛙色1号

カールじいさんの空飛ぶ家の蛙色1号のネタバレレビュー・内容・結末

カールじいさんの空飛ぶ家(2009年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

この冒険活劇で主人公をじいさんにして、旅先で出会う別のじいさんとのバトルに持ち込むという発想が凄い!

また、この作品はとにかく本題に入るまでがスピーディで、かつ視聴者を置き去りにしない非常にテンポの良い仕上がりになっている。
なんと映画が始まってからじいさんが家を飛ばすまで約20分。
その間に、
・幼少期の妻との出会い
・結婚後一緒に家をDIYする様子
・子供を授かれず落ち込む妻
・度重なる急な出費でなかなか貯まらない旅行資金
・妻に先立たれ孤独な老人に
・ちょっとした事故により危険人物に指定され老人ホームに強制入居が決まる
というじいさんのリアル過ぎる人生が描かれる。
視聴前は「おじいさんが大量の風船で家を飛ばすなんてファンシーな作品だな」と思っていたのに、まさか家を手放したくないじいさんの苦肉の策だったとは…。

カールじいさんと対峙することになる冒険家のじいさんはストーリー上は悪役ということになるが、根っからの悪人というわけではない。
ただ、カールじいさん同様に己の目的に固執した存在であり、目的のためなら手段を選ばず悪どいこともする。そんな彼に打ち勝つことがカールじいさんのステップアップにも繋がっている。

最終的にカールじいさんは全てを失うことになるが、それでも幸せそうなのは冒険を通じて新たに得たものが大きいからだろう。
個人的には目的を達成してハッピーエンドという作品よりも、このような紆余曲折あり最終的にうまいこと収まったという作品の方が好きです。
同じくピクサー作品だとモンスターズユニバーシティなどもそう。

世間では夢や目的意識を持つことは良いことだとされているが、結局は「これがしたい」という個人の欲でしかない。
確かに目的達成のための努力は人の成長の糧にもなるが、なりふり構わなくなり大切なものを見過ごしたり、周囲に迷惑をかけるような事態になってしまえば意味がない。
カールじいさんはそんなことを教えてくれる作品なのかもしれない。
蛙色1号

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