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ある日どこかでのmikanmcsのレビュー・感想・評価

ある日どこかで(1980年製作の映画)
4.5
(正確には1980年の作品ですが)U-NEXT 70年代祭り#5. 名作と聞いていたものの、なぜか見逃していた本作。やっと見られました。

若い頃、自由が丘の武蔵野推理劇場の二本立てで本作が上映されていたのですが、途中から入場して「なんか眠い映画だな~」と思った記憶があります。(もう一方の映画が目当てだったのでそう思ったのでしょうが、見た映画が何だったかは全く覚えてなくて、見なかったこちらを覚えているのは面白いですね。)

タイムトラベル名作では必ず言及される本作、たしかに不思議でノスタルジックで夢を見たような、なんとも悲しい恋の話で、見終わって独特の余韻が残りました。

過去への郷愁と不思議な味が混ざったお話なので、原作はジャック・フィニィの小説だろうと思っていましたら、原作者はリチャード・マシスンだったので超意外。「マシスンはん、ああた、作風違うやん、パクリやん」と思いましたが、一応作品中では「フィニィ教授」が登場し、オマージュ捧げてますのでオケ。

この映画、ジョン・バリーの静かなピアノの旋律が素晴らしいですが、撮影も素晴らしかったです。主人公のリチャードがエリーズを探していて、黒いカーテンを下ろすと窓のガラスに渚を散歩する彼女が写り込む場面、彼女が去ってしまったと落胆してホテルのポーチに腰掛けていると、庭園の彼方からエリーズが姿を表す場面など、計算された構図が印象深いですし、二人が散歩する場面は靄がかかったような絵作りで、夢の中にいるような雰囲気がよく出ていました。

最後にジェーン・セイモアの清楚な美しさは驚異。もしホテルの展示室の写真の女優がジェーン・セイモアでなかったら、、、と考えると、この映画の儚(はかな)げで甘くて苦い味は、彼女の美しさに多くを負っていると思いますね。(初めてリチャードに会った時に言う「あなたなの?」のセリフも巧すぎます!)

最近、スカッとする映画ばっか見てるような気がしますが、こういう深い余韻を残す映画もいいものですねえ、、、ハア~(ため息)。
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