寅さん、7本目のマドンナは榊原るみ。
最近見ないが好きな女優さんだ。
青森出身で集団就職で静岡に働きに出てきた少女「花子ちゃん」を演じる。意外にも自然で無理のない演技だ。
花子ちゃんを故郷で指導していた小学の先生役の田中邦衛も、こういう立派な先生たまにいるなあ、という説得力がある造形。脚本、演出ともキチンと取材を重ねてのものなのだろう、見事な出来である。
沼津の交番での手助けに始まり、なにくれとなく面倒を見る寅さん。花子ちゃんがふと<寅さんの嫁になろうかな>と呟いたことですっかり舞い上がってしまう。真剣に二人の結婚について考えるさくら、反対する周囲。
今だったらあのような理由で反対するということでなく、花子ちゃんがどう思っているかを中心にした脚本になるかもだけれど、それだとコメディーとしては作りにくくなりそう。
寅さんは40本以上続いたけれど、生まれた時代が「恋の勘違い」を許していたという事情もあるのだなあ、と思った。
花子ちゃんの仕事、いつまであるのだろうなあ?葛飾にいた方が良かったのでは?とふと思ったりもしたのだけれど、しっかりと生徒にも言い返す強さを見て、これでいいんだろうなあ、と思ったりもした。
寅さんのお嫁さんに関しては、私はお母さんの見方の方が現実的だと思ったのですが、そこで納まっていたら寅さんではありません(笑)。
寅さんを思うさくらがいて、気のいいとらやの夫婦や街の人たちがいて、全くもって部外者で冷静なお母さんがいて、ちょうどよくバランスが取れていた絶妙な回でした。
(今だったらどういう脚本になるのだろう? 2021/12/2記)