つのつの

道のつのつののレビュー・感想・評価

(1954年製作の映画)
4.0
所謂「恥ずかしながら未見だった」作品。
今更自分如きが言うのもって感じだけど、フェリーニは「祭りの作家」だと思う。
重要なのは、祝祭の高揚感とその終わり=「祭りのあと」の物悲しさを同時に描く点。今この瞬間の楽しさとそれがほんの一瞬でしかないという切なさを同時に孕んだ場面がとても多い。
ジェルソミーナもマットも学はないが、その点には気がついてる。だから一瞬一瞬を楽しんで生きている。しかし、ザンパノは違った。楽しさよりも嫉妬や苛立ちに身を任せてしまう。自分と共に祭りを楽しんでくれる存在に気がつかず、性欲に赴くまま適当な女と寝るだけ。祭りは(ひいてはそれに彩られる人生は)永遠ではないのに。
タイトルにもなっている「道」の描き方もとてもスマート。
道の向こうからやってくるサーカスや楽隊は祭りを運ぶけれど、彼らは道の彼方へ去っていき祭りも終わる。
祭りが終わり、楽しみがなくなっても彼らはトボトボと道を進むしかない。だったらせめて一緒にいてくれるパートナーは大事にしろよと思うのに、ザンパノはそれもわかってない。
どうしようもなく身勝手で愚かな男ザンパノ。現代の視点から見たら、彼がジェルソミーナにする数々の言動は、マンズプレイニングじみていて心底居心地が悪くなる。なのに、そんな情けない男のラストの姿には哀愁を感じてしまう。
「道」の歩みを止めて、寝食を共にする場面で心休まるのが多いのも納得。これこそ映画だよなと思わせてくれる作品。
つのつの

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