フォルスタッフ

県警対組織暴力のフォルスタッフのレビュー・感想・評価

県警対組織暴力(1975年製作の映画)
5.0
大抵のシリーズものには一段落をつける・区切りをつけるための作品が存在する。宇宙世紀ガンダムなら∀ガンダムがそれであろうし、ゲームなんかでもよくある。
ところでこの映画は、いわゆるヤクザ映画を”終わらせた”映画である。そもそもの背景として『山口組三代目』がヤクザを美化しているとのことで非難を受け、時代的にも芸能界とヤクザの関係性が公に持ち出されつつあった時代、かつて実録物の代名詞とされてきた仁義シリーズ一作目で交通誘導を現役のヤクザが手伝ったなどというのも今や昔。そのような時代にこの映画は生み出された。仁義シリーズで主人公を演じた菅原文太は腐敗したヤクザと蜜月を結ぶ刑事であり、親友であるヤクザは立てこもりの末に菅原文太演じる刑事に射殺され、その刑事もまた地方へ飛ばされ謎めいた死を遂げ、両者の関係性を変質させた清廉な刑事は生き残り石油会社へと天下りする……この映画の後にも実録モノやそうでないヤクザ映画は多数出てくるし、北野武のアウトレイジシリーズのような中興の祖とも言うべき作品も出てきたが、何であれこの『県警対組織暴力』は、ヤクザ映画の蜜月の時代の終焉を象徴するに相応しい映画である。