このレビューはネタバレを含みます
昭和38年、倉島市では大原組と川手組の抗争が続いていた。
暴力団担当の久能刑事は大原組の若頭・広谷と癒着しつつも、大原組のメンツを潰さないよう検挙を進めていた。しかし、川手組と癒着した県警上層部から海田警部補が署に派遣され、大原組の一掃を命じる。
久能は広谷を庇うが、その理由が弱みを握られたわけではなく、逆に貸しを作ったことにあるというのが面白い。
久能は悪徳刑事ではあるものの、現場の人間は少なからず癒着することで均衡を保とうとしてきた。戦後の闇市を経験した久能は綺麗事だけで生きられないことを知っており、潔白を求める海田と対立する。ただの癒着であれば糾弾することも、呑むこともできるが、闇米で生き警察がその闇米を奪っていったという過去が、久能の精神性と結びつく。
海田の徹底的なやり方で大原組は荒らされ、久能と広谷は離れていく。後のなくなった広谷を前に、久能は警察とヤクザの間で板挟みになってしまう。
頂上作戦のような「県警」と「組織暴力」の対立の話かと思いきや、二人の男の関係性の話だった。