えそじま

大人は判ってくれないのえそじまのレビュー・感想・評価

大人は判ってくれない(1959年製作の映画)
5.0
「そもそもどのような涙に培われた才能の持主が、いつかこの最も感動的な悲歌をうたい、この苦悩の絵巻を…まだ柔らかいその根も家庭の土壌のなかで堅い石ころにしか出会えず、その最初の若葉は憎しみによって引き裂かれ、その花はまさに開こうとする瞬間に霜に痛められてしまう、このような苦悩の絵巻を描けるのでしょう。一体どんな詩人が、その唇は苦い乳房を吸い、その微笑みは厳格な目の光にあって窒息してまう、そのような子供の悲しみを言い表してくれるというのでしょうか。新たに生まれてきた私は、親たちのどんな虚栄心を傷つけたものか知る由もありません。そもそもどんな肉体的あるいは精神的欠陥があって、母にあんなに冷たくされたのかわからないのです。私は余儀なく出来てしまった子供だったのでしょうか。望みもしないのに生まれてきたとか、その子が生きていることが呵責の種でもあるとかいうような?自分で考えてみても子供心にはなんの覚えもなく、それが大人になってからはなお一向にわからないのです」

(引用、オノレ・ド・バルザック『谷間のゆり』第一編「少年期と少女期」より、訳 宮崎嶺雄)
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