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大人は判ってくれないのbennoのレビュー・感想・評価

大人は判ってくれない(1959年製作の映画)
4.0
アンリ・ドカエ撮影作品…。

フランソワ・トリュフォーの長編第1作…。

アントワーヌ・ドワネル(ジャン=ピエール・レオ)はパリの下町に住む14歳の少年…学校では先生に目をつけられ、家では、いつも機嫌の悪い母親とお調子者で頼りない父親…ふたりは何かと夫婦喧嘩ばかり…。

唯一の友達はお金持ちのルネ…アントワーヌが家出した時も親戚の印刷工場で寝泊まりさせてあげます…。

彼らにはモラトリアムや甘い子供時代など無く…そんな彼らの乾いた心を救うのは…バルザックと映画との出会い…。

学校をサボる口実を教師に迫られて、つい… « Ma mère … elle est morte. »(母が死んだ)と嘘をつくアントワーヌ…だがすぐにバレて叱咤されます…。

とうとう親友ルネと放浪…お金もなくなり父親の会社からタイプライターを盗んで質に入れようとするものの…捕まり少年鑑別所へ……。


タイトルクレジットからのエッフェル塔の映像やパリの街を先生が先導する列から徐々に離れて行く生徒たち…空撮での長回しが見事です…光、影、鏡の映像は納得の素晴らしさ…何より子供たちの表情を映し出すカメラワークは秀逸です…特に遊園地でのアトラクションで遊ぶ、無邪気で子供らしい表情のアントワーヌ…学校にいる時とは違い、全てがナチュラルで魅力的です…。

また、ジャン・コンスタンタンの音楽も少年たちの心情を巧みに表現しています…。



  〜〜〜⚠︎以下ネタバレ含みます⚠︎〜〜〜







鑑別所でのインタビューでアントワーヌは…

« Je mens… mais seulement de temps en temps. Parfois, si je disais la vérité, ils ne me croiraient pas. Je dis donc des mensonges. »
(僕は嘘をつきます…けど、時々です。本当のことを言っても、信じてもらえないので…なので僕は嘘をつくんです)

アントワーヌは理不尽な大人達の言動や行動に反抗し様々な悪さを行ってきましたが…恐ろしいのはそんな子供に手を焼いた親が子供を見限ること…母親がアントワーヌを少年鑑別所に入れて欲しいと懇願したのです…これまでにも親の愛情の足りないネグレクトがあったのでしょう…。

そして面会日には、両親から別れを告げられ…彼は鑑別所を脱走…。

彼の走り続ける長回しのシーン…そして行き着いた場所での最高のショット… 必見です!!


子供の視点から見つめたフランス社会の欺瞞…。大人の作り上げた秩序には従わざるを得ない…そこでは子供であっても子供扱いはされないのです…。

フランス人は行為に対して « gentil(e) »(優しい)という表現を使いますが、人物そのものに対して優しいという表現は« naïve »(ナイーブ)の意味にとられ、忌み嫌います(フランス人の友人談)…幼い頃から子供扱いしない教育に通じるところがあるのでしょうか… 幼く見えることを嬉しいと思う日本人とは真逆な気がします…。

流石に時代はかなり古いものですが…日本とフランスの家族、教育の捉え方の違いを考えさせられる作品でした…。

因みに原題は « Les Quatre Cents Coups »
          (400発の殴打)…。


thanks to ; leylaさ〰︎ん ☾°̥࿐໒꒱ ⡱
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