第一次世界大戦後のイタリアで、元兵士たちのほっこり大人ロマンの話。
ゆったりとしたジブリならではの空気感がありつつ、スピードのあるアクションシーンでは臨場感のある映像だった。
風景の美しさなどの映像美は言うまでもないが、動きの速さや展開の緩急が飽きさせず、観入っていたら終わってしまった。虜にさせる素敵な作品だった。
元兵士であり、現代ではタブーとされている「男らしさ」を貫く様子が、良くも悪くも真っ直ぐな人しかおらず、その精神でストーリーが進んでいるのがとても気持ち良かった。誰もナヨナヨしていない。
ポルコの言い回しの一つ一つがカッコつけているのにカッコ良くて、意味もストレートに通じるのにおしゃれで、渋いおじさんだった。現代だとバーテンにいそう。
フィオの凛々しくて技量もあって、口が達者で気持ち良い。
『天空の城ラピュタ』『耳をすませば』など他のジブリ作品でも、女性は丁重に扱われなければならない風潮の中でも、自力でどうにかしてやるぞという男気のある少女が必ず出てくる。
おばさん達も中年パワーで男性の尻を叩くので、時代背景も制作時期も男尊女卑作品であるはずなのに、女性が蔑ろにされていなくて嬉しい。
カーチスのバカっぽくてかわいさがある。なんだこいつ、憎めない!
他の飛行艇乗りゴロツキも単細胞で、ラピュタのマザコン集団みたいに単純で惚れっぽくて良い笑
ジーナは3人の男性と結婚するも死別しているが、ポルコに惚れていた。きっと最初の結婚の前から惚れていて、しかしポルコも含め全員が飛行艇乗り(特攻)なので死ぬ運命が決められている。
ポルコと最初に結婚しなかったのは、失うことが怖いからだったのだろうと感じた。自分から恋愛へは踏み込まず昔馴染みとしてのみ接するのも、ポルコに惚れているのを悟られまいとしているか、もっと好きになって傷つきたくないのかもしれない。
ポルコは豚の姿で、それを誰も違和感なく、しかし豚の姿である人間だと認識していて不思議だった。
彼自身、戦争には反対派であり、自分の飛行艇にも共和主義のシンボルがプリントされていた。これは元兵士の立場としては許されないことであり、戦後も貫いているからこそどっちつかずで生き延びた人としての豚なのかもしれないと感じた。人間はよく諺などでも豚に例えられるので。無能の象徴というニュアンスかな?
顔が広くどこに行っても愛され優しくされるポルコが、日頃どれだけ人々に感謝しながら過ごしてきていたかが窺えてほっこりした。戦争による恐慌でも金払いが良いこと、ガソリンを高いと言うフィオに「持ちつ持たれつ」と言ったことなどから、戦争は反対だが誰しも生活がかかっていることは平等であり、金は道具に過ぎないと考えているようでかっこよかった。