一人旅

わが街の一人旅のレビュー・感想・評価

わが街(1991年製作の映画)
4.0
第42回ベルリン国際映画祭金熊賞。
ローレンス・カスダン監督作。

ロサンゼルスを舞台に、複数の男女の日常を描いた群像劇。
群像劇は好きなジャンルだが、結局何を言いたいのかいまいち伝わりづらい内容だった。ただひとつ言えるのは、人生は何気ない偶然の連続で、それらを意識的に回避することはできないということ。『127時間』のジェームズ・フランコの“この岩は何年も前から自分が通る瞬間をじっと待っていた”という言葉を思い出す。本作で、横からトラックが迫ってきているのに横断歩道を渡ろうとした弁護士を、背後にいた見知らぬ女性が一瞬の判断で救い出すシーンがある。これはまさに自分自身の力では変えようのない偶然が弁護士の人生に関与したことを意味する。無数の偶然に対して抵抗力を持たない無力な人間が唯一できることが“選択”だ。自分自身の意思による選択と、人生において決して変えることのできない偶然(=運命)。双方を描くことで人間としての生き方を提示している。
ラストカットで映し出される広大なグランドキャニオンの描写が印象的だ。人間の意思が及ぶことなく永遠に時を刻んでいく圧倒的自然と、刹那的だが同時に生きる強さを兼ね備えた人間の姿を対比的に映し出している。
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