SANUKIAQUA

耳をすませばのSANUKIAQUAのレビュー・感想・評価

耳をすませば(1995年製作の映画)
4.4
監督の近藤喜文さんの画集を見たとき
この人の日常を観察する優しい視線が
魅力的でした。
この作品にもそれは活かされていて
もっとこの人の監督作を見たかったと
今でも思います。

オリビア・ニュートンジョンが歌う
カントリーロードの流れる
オープニングが素晴らしい反面、
世界は広いのに小さな町の
狭い団地の部屋に生きている
現実を突きつけるようでもあり
軽い絶望感も感じます。
それは雫の置かれた状況そのもので
夜明けに自らの言葉と歌が重なる
エンディングの開放感と希望に満ちた感じが
好対照になっていて良いと思います。

中3になるといきなり進路という
現実がのしかかってくるけれど
自分が何者で、何がしたくて
何ができるのかもわからず
世界も自分の住む町くらいでしかない
子供に進路を定めるのは
ひどく難しいと思います。

ヴァイオリン作りの職人になる
と決心している聖司にしても
内心は不安でいっぱいなんだと思う。
何がしたいのか、できるのか
よくわからないけれど
できることをやってみる
自分にも覚えがあるので
必死で物語づくりに励み
自己嫌悪に陥る雫には共感できました。
ただこんな両思いの恋愛なんて
できませんでしたが。
雫が幸せなのは助言してくれる父や
西さんがいたことだと思います。

さっさと自分がしたいことが
見つかって道を進んでいる
同級生を見て不安になる
子供たちは今も変わらず
たくさんいるだろうし
そういった子の方が多いと思います。
自分を否定しずぎず焦らず
今できることを誠実に頑張って欲しいです。

宮崎駿さんはこの作品を作るきっかけとして
若手が作った「海がきこえる」に
不満があったからで
その不満を解消するために
最後の聖司のセリフがあるんだけど
公開当時は、そこまで言う?と
びっくりしましたね。

本作も好きな作品ですが
個人的には「海がきこえる」の方が
実は好きです。
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